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農業をしない人が農地を相続する際に注意すべき点を解説

2022年01月20日
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農業をしない人が農地を相続する際に注意すべき点を解説

大分市が公表している統計年鑑によると、平成27における大分市内の農家数は4281戸でした。平成17年には5615戸であったため、十年間で農家の数が減ったことがわかります。また、令和2年の農地転用状況の統計をみると674件の農地転用がありました。このうち一定数は、相続などで農業をしなくなった方による農地転用が含まれているものと考えられます。

農業を営んでいる親が亡くなった場合には、その相続人は農地を相続することになります。とはいえ、すべての方が親の農業を継ぐというわけではありません。なかには、農業をしないにもかかわらず農地を相続することになったという方もいるでしょう。

しかし、農地は、農地法による規制を受けることになりますので、農業をしなかったとしても所定の手続きが必要になるのです。本コラムでは、農業をしない人が農地を相続する際に注意すべき点について、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説します。

1、「農地相続」の基本

農地を相続することになった場合には、農業をしない場合であっても、農地法に基づいて農業委員会への届出が必要になります。
以下では、農業委員会への届出について説明します。

  1. (1)農業委員会への届出

    農地法では、農業生産力の増進と耕作者の地位の安定を図る目的から、農地の権利移動をする場合や農地の転用をする場合に農業委員会の許可が必要とされています。
    しかし、相続により農地を取得した場合には、農業委員会による許可までは必要ありませんが、農業委員会への「届出」が必要となります。
    相続する土地農業委員会への届出が必要な「農地」であるかどうかは、登記簿上の地目ではなく、現況によって判断することになります。
    そして、現況が「農地」であれば、一時的に休耕していたとしても農地法に基づく届出が必要となるのです

  2. (2)必要書類

    農地を相続した場合には、農業委員会への届出が必要になりますが、届出の際には、以下の書類を提出する必要があります。

    • 農地の相続等の届出書(農地法3条の3の規定による届出書)
    • 農地の権利取得をしたことがわかる書類の写し(遺産分割協議書、全部事項証明書など)


    「農地の相続等の届出書」は、最寄りの農業委員会の窓口や市区町村のホームページ上からダウンロードすることができます。

  3. (3)届出期限

    農業委員会への届出については、相続開始があったことを知ったときから10か月以内に行わなければなりません。期限内に届出をしないと、10万円以下の過料に処せられる可能性があるため、注意が必要です。
    遺産分割や相続登記には期限がないからといって、相続手続きを後回しにしていると、相続財産に農地が含まれる場合には、上記期限を徒過するおそれがあります。相続が開始した場合には、早めに相続手続きに着手するようにしましょう

2、農地を相続したけど農業をしない場合、相続税はどうなる?

農地を相続したけれども農業をしない場合には、相続税の算定にあたってどのような影響があるのでしょうか。

  1. (1)相続税の基本

    相続税が課税されるかどうかは、相続財産の総額が相続税の基礎控除額を超えているかどうかによって判断します。相続税の基礎控除額は、以下のように計算します。

    相続税の基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)


    基礎控除の範囲内であれば、農業を継続するか否かにかかわらず、相続税が課税されることはなく、相続税の申告も不要です。
    他方、基礎控除額を上回る場合には、原則として相続税が課税されることになりますが、相続人が農業を営む場合には、農地にかかる相続税について納税猶予制度が適用される結果、相続税の負担を抑えることが可能になるのです。

  2. (2)農地の相続税納税猶予制度とは

    農地の相続税納税猶予制度とは、農地を相続した相続人に対して、農地にかかる相続税の納税を猶予する制度のことをいいます。
    「納税猶予」という言葉からは、「相続税の支払いが先延ばしになるだけでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、農地の相続税納税猶予制度は、農地を相続した相続人が死亡した場合には、納税を猶予されていた相続税が免除されることになりますので、結果として相続税の納税が免除される制度となるのです
    ただし、あくまでも農業を続けることによって適用される特例ですので、被相続人が死亡の日まで農業を行っていたことや、相続人が農業を引き継いで、その後も農業を継続することなどが要件となります。

  3. (3)農地の相続税納税猶予制度の利用方法

    農地の相続税納税猶予制度を利用するためには、被相続人の死亡の翌日から10か月以内に、税務署に対して相続税の申告書を提出しなければいけません。その際には、納税猶予額と利子税に見合う担保を提供する必要があります。
    また、農地の相続税納税猶予制度を利用した場合には、相続税の申告書の提出で終わりというわけではなく、3年ごとに「相続税の納税猶予の継続届出書」の提出が必要となります。この届出を怠った場合には、相続税の納税猶予が取り消されて、猶予されていた相続税とその利子税を支払う必要があるのです。継続届出書の提出を失念しないように、注意しましょう。

3、農地転用をする際の手続きと費用

農地を相続した相続人が農業をしない場合には、農地転用を行い、農地の活用または売却がなされることがあります。
農地転用をするために必要となる手続きについて、解説します。

  1. (1)農地転用とは

    農地転用とは、その言葉のとおり、農地を農地以外のものにすることをいいます。
    農地を相続した相続人が農業をしない場合には、農地のまま残しておいても有効に活用することができず、売却も困難となります。そこで、農地転用によって農地を宅地などに転用することにより、相続人自身が自宅を建てたり、売却したりするなどの活用が可能になるのです。
    しかし、農地の所有者が自由に農地転用をすることができるとなると、農業生産力が減退し耕作者の地位も不安定なものとなってしまいます。そのため、農地法では、農地転用する場合には、農業委員会の「許可」が必要とされるのです。

  2. (2)農地転用の手続き

    農地転用をする場合には、以下のような手続きが必要になります。

    ① 4ha以下の農地の場合
    転用をする農地が4ha以下の場合には、都道府県知事の許可が必要になります。具体的な手続きの流れは、以下のとおりです。

    • 申請者は、農業委員会に申請書を提出
    • 農業委員会は、意見を付けて都道府県知事に送付
    • 都道府県知事は、農業会議に諮り、意見を求める
    • 都道府県知事から申請者に農地転用の許可通知が送られる


    ② 4haを超える農地の場合
    転用をする農地が4haを超える場合には、農林水産大臣の許可が必要になります。具体的な手続きの流れは、以下のとおりです。

    • 申請者は、農業委員会に申請書を提出
    • 都道府県知事は、意見を付けて農林水産大臣に送付
    • 農林水産大臣から申請者に農地転用の許可通知が送られる
  3. (3)農地転用の費用

    農地転用の許可申請自体には、費用はかかりませんが、許可申請をするために必要となる書類を作成・収集したりするのに費用がかかります。
    許可申請を自分で行えば、必要書類の取得費用だけで済みますが、専門家に依頼をした場合には、その費用も負担する必要があります。必要となる費用は、ケースバイケースですが10万円前後の費用がかかります。
    また、実際に農地を転用する際には、造成工事などを行う必要があります。農地の規模によっては、100万円を超えるような工事費用がかかる場合もあります。
    実際に農地転用を行う場合には、転用後の売却先などを十分に検討してから行うようにしましょう

4、農地相続をするなら弁護士に相談

農地を相続した方やこれから相続する予定のある方で、農地の相続に関してお困りの方は、弁護士にご相談ください。

  1. (1)農地の活用方法についてアドバイスしてもらえる

    親が農業を営んでいたとしても、その子どもは独立して別に生計を立てているという場合には、親から農地を相続したとしても農業を引き継ぐという選択肢は、あまり現実的ではありません。農地を相続したとしても、すべての方が農業を行うというわけではないのです。

    しかし、相続した農地をそのまま放置していたら、毎年の固定資産税の負担があるだけで、何のメリットもありません。そのため、農地を相続することになった場合には、その後の活用方法を考えていかなければならないでしょう。
    弁護士であれば、「相続した農地は、農地転用が可能な農地であるのか」を調査したうえで、農地の有効な活用方法をアドバイスすることができます。相続財産全体の状況をふまえて、相続するメリットがないという場合には、相続放棄という手続きもあります。どのような方法が最適なのかについては、専門家である弁護士とよく相談して決めることをおすすめします

  2. (2)遺産分割協議をまとめてくれる

    被相続人が死亡した場合には、被相続人の遺産の分割について相続人全員で話し合いをして決めていく必要があります。しかし、相続人同士で遺産の分割方法などをめぐって意見の対立がある場合には、スムーズに遺産分割協議を行うことができません。
    弁護士は、相続人の代理人として遺産分割協議に立ち会うことができますので、法律の専門家という観点から適切な遺産分割方法を提案して、話し合いをまとめることができます。どうしても話し合いで解決することができないという場合でも、遺産分割調停や審判といった法的手続きによって解決を図ることができます。ぜひ、安心して弁護士にお任せください。

5、まとめ

農地を相続したとしても、相続人が農業をしない場合には、相続した農地には財産的価値はほとんどありません。しかし、農地転用などの手続きをとることによって、相続した農地を有効に活用することができる場合もありますので、農地を相続してお困りの方は、まずは専門家である弁護士に相談をするようにしましょう。
農地の相続でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスにまで、お気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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