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銭湯や温泉を運営するなら知っておくべき「公衆浴場法」について

2022年01月20日
  • 一般企業法務
  • 公衆浴場法
銭湯や温泉を運営するなら知っておくべき「公衆浴場法」について

大分県の平成31年3月31日の統計によりますと、大分市では公衆浴場の数が61軒、大分県全体では558軒となっていました。また、旅館・ホテルは、大分市では108軒、大分県全体では1165軒です。

大分県には全国的にも有名な温泉地である別府があり、観光も活発です。コロナ禍が原因で廃業した旅館や銭湯もあるでしょうが、コロナが収まったら、インバウンドも含めてふたたび大分県の観光が盛んになり、経済も活性化することが予想されます。そのため、現在の段階から、旅館・ホテルの経営や銭湯・健康ランドなどを新たにオープンして経営することを検討されている方もおられるでしょう。

法的な視点からは、旅館や銭湯などを経営するためには、公衆浴場法、旅館業法、温泉法、付随する条例・政令など多数の法令が関係することになります。本記事では、公衆浴場法などについて、ポイントとなる事項をベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説いたします。

1、そもそも「公衆浴場」とは?

「公衆浴場」を営むためには、公衆浴場法2条1項に定められた都道府県知事の許可を受ける必要があります。なお、法律上の都道府県知事とは、保健所を設置する市または特別区では、市長または区長になります。

公衆浴場法では、「公衆浴場」とは、「温湯、潮湯または温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設」と定義されています。(公衆浴場法1条)。
そして、この「公衆浴場」は、「普通公衆浴場」と「特殊公衆浴場」(「その他公衆浴場」と表現されることもあります)に分類されているのです

  1. (1)普通公衆浴場

    普通公衆浴場は、「その地域の住民の日常生活の衛生上必要なものとして利用される施設」と定義されています。
    いわゆる、一般的な「銭湯」のことを指します。
    また、銭湯では、物価統制令の適用があり、入浴料の上限について規制を受けることになります。

  2. (2)特殊公衆浴場(その他公衆浴場)

    特殊公衆浴場の定義は、「普通公衆浴場以外の公衆浴場で、保養、娯楽その他の目的をもって設けられる公衆浴場」です。いわゆる健康ランドやヘルスセンター、サウナや岩盤浴、エステティックサロンの泥風呂などが該当します。
    特殊公衆浴場は、普通公衆浴場のいわゆる「銭湯」からは離れたイメージのある、泥風呂なども含まれるので、何らかの浴場を提供している場合には、公衆浴場法上の「公衆浴場」に該当するかどうか注意すべきでしょう。後述しますが、公衆浴場法の規制に違反した場合には、刑事罰の対象になり得るためです
    なお、他の法令に基づき設置・運営されて、衛生措置がとられている場合には、公衆浴場法の適用外となります。たとえば、病院や老人保健施設のデイケアとして利用されている浴場については公衆浴場法が適用されないのです。

2、「公衆浴場法」の概要

公衆浴場法の適用の対象となる普通公衆浴場と特殊公衆浴場(その他公衆浴場)は、銭湯やサウナなどでしたが、公衆浴場法とはどのような法律でどのような規制をしているのか、違反した場合にはどのような制裁があるのかについて、解説します。

  1. (1)規制の概要

    公衆浴場法では、まず第2条第1項で「業として公衆浴場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。」として、公衆浴場を営む場合には都道府県知事の許可を得なくてはならないことが定められています。
    この公衆浴場の許可は、「都道府県の条例で定める構造設備基準・適正配置基準に従っているか」によって判断されます(公衆浴場法第2条第2項、第3項)。また、都道府県知事は条件を設定することもできます(公衆浴場法第2条第4項)。

    さらに、公衆浴場の運営は、都道府県の条例で定める換気、採光、照明、保温、清潔等の衛生・風紀基準に従う必要もあります(公衆浴場法第3条)。
    なお、これらの構造設備の基準、配置基準や衛生・風紀の基準を定めた条例は、公衆浴場法施行条例などとして各自治体で制定されています。

    その他の規制として、伝染性の疾病にかかっている者と認められる者に対しては入浴を拒否しなくてはならないとの定めもあり、この規定も遵守する必要があります(公衆浴場法第4条)。

  2. (2)違反した場合

    公衆浴場法の規制に違反した場合の制裁は、営業許可の取り消しなどといった許可に関する制裁と、刑事罰とに分かれます。

    まず、都道府県知事は、都道府県の条例で定める構造設備基準などに反するときは許可の取り消しまたは営業の停止を命ずることができるものとされています(公衆浴場法第7条)。
    刑事罰としては、都道府県知事の営業許可を取得しないで公衆浴場を営業した場合や、業務停止命令に反した場合には、6か月以下の懲役または1万円以下の罰金に処せられることになるのです。
    また、伝染性の疾病にかかっている者と認められる者に対しては入浴を拒否しなくてはならないとの規定に違反した場合(公衆浴場法第4条)には、「拘留」や「科料」の処罰が下されることになります。

3、温泉旅館の場合は「旅館業法」

温泉旅館には、銭湯と同様に浴場があります。しかし、温泉旅館には公衆浴場法は適用されません。その代わりに、旅館業法の適用を受けることになるのです。

  1. (1)規制の概要

    旅館業法では、旅館業(ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の4類型)を行う場合には都道府県知事の許可を得なくてはならない、と定められています(旅館業法第2条)。都道府県知事の許可が必要とされる点では、公衆浴場法と旅館法は共通しています。
    「旅館業」のうち、ホテル営業とは、洋式の構造と設備を主とする施設を営業することにあたります。一方で、旅館営業とは、和式の場合をいいます。温泉旅館はこの旅館営業に該当しますので、旅館営業の適用を受けることになります。また、民宿も旅館営業にあたる場合がある点に注意してください。
    簡易宿所営業には、山小屋やカプセルホテルなどが該当します。
    下宿営業は、1か月以上の期間の単位で宿泊させる営業をいいます。

    また、旅館業者は、伝染性の疾病にかかっている者や風紀を乱すおそれのある者などを除き宿泊を拒むことはできません(旅館業法第5条)。これは旅館業法の公共性から契約自由の原則の例外にあたる定めといえるでしょう。
    さらに、旅館業者は、宿泊者名簿を備えておかなければいけないのです(旅館業法第6条)。

  2. (2)違反した場合

    公衆浴場法と同様に、旅館業法に規制に違反した場合の制裁も、営業許可の取り消しなどといった許可に関する制裁と、刑事罰とに分かれます。

    都道府県知事は、旅館の構造設備基準または衛生基準に反するときは改善命令、許可の取り消しまたは営業の停止を命ずることができます(旅館業法第8条)。
    また、都道府県知事の許可を得ずに旅館業を営んだ場合や前述の改善命令に違反した場合には6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処されたり、これらが併科されたりすることになります(旅館業法第10条)。

    なお、以前までは罰金は3万円以下と規定されていましたが、違法な民泊サービスの広がりを踏まえて、平成29年の改正によって3万円から100万円へと大きく罰金額が引き上げられたのです。

4、温泉を運営する際には「温泉法」にも注意

温泉旅館を営業する場合には、旅館業法のみならず、温泉法についても気を配らなければいけません。

  1. (1)温泉法第15条

    温泉法第15条第1項では「温泉を公共の浴用または飲用に供しようとする者は、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。」とされており、温泉旅館を営む場合にはこの許可を得ることが必要となります。
    この許可を得ずに、温泉を浴用に供した場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられることになります(温泉法39条)。
    また、温泉法第15条第1項の温泉の利用の許可を得た施設では、温泉の成分・禁忌症等を施設の見やすいところに掲示することが必要となります(温泉法第18条第1項)。温泉でよく見受けられる成分の表示は、このような温泉法の規制に基づくものなのです。
    これらの温泉成分の掲示は、登録分析機関の行う温泉成分分析の結果に基づくことが必要とされます(温泉法第18条第2項)。

  2. (2)その他の規制

    温泉法ではこのような温泉の利用許可のほか、温泉を出す目的の掘削や増靴などを行う場合、温泉源から温泉を採取する場合についても、都道府県知事の許可を要するものとしています(温泉法第3条第1項、第11条1項、第14条の2第1項)。

5、銭湯や温泉を運営するなら弁護士にご相談を

以上のように、銭湯の運営や温泉旅館の運営にあたっては、公衆浴場法、旅館業法や温泉法による各種の規制があります。また、それぞれの法では、条例や政令に委任しているものも多く、検討・調査すべき法令は多岐にわたるのです。
万が一、規制に反した場合には、許可を取得できない場合や許可を取り消し営業停止を受ける場合もあり、さらには刑事罰の対象となるおそれもあります。
このように、銭湯の運営や温泉旅館の運営では、法的な観点から各種法令の規制に対して十
分な配慮も必要となるために、弁護士に相談されることをおすすめいたします。

6、まとめ

銭湯の経営、旅館・ホテルの経営にあたって、万が一違反してしまった場合には、許可の取り消しや刑事罰の対象になるために、公衆浴場法、旅館業法、温泉法の各規制に配慮することは必要不可欠となります。
これから銭湯や温泉旅館の運営を検討される方、すでに運営されていても心配や悩みがある方はぜひともベリーベスト法律事務所 大分オフィスにまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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