相続で事前にできることは? 目的や注意点、弁護士に相談するメリット
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令和5年の大分市の死亡者数は5425名でした。
被相続人が亡くなると相続が発生しますが、相続対策は、生前から早めに行っておくのが争いを避けるためにも重要です。
本記事では、相続対策として事前にできることの具体例や、相続対策に関する注意点などをベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説します。


1、相続対策を事前に行う目的
将来の相続に向けた対策は、早めに行っておくことをおすすめします。相続対策を事前に行うことの主な目的は、以下のとおりです。
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(1)自分(被相続人)の意思を相続に反映させるため
相続対策によって遺産の分け方をあらかじめ決めておくと、被相続人となる方は自分の意思を相続に反映させることができます。
単に法定相続分に従って遺産を分けるのではなく、親しい家族へ多めに遺産を与える、お世話になった人に遺産を譲る、慈善団体に寄付するなど、自分らしい選択ができる点が相続対策のメリットの一つです。 -
(2)相続トラブルを防ぐため
相続対策によって遺産の配分を決めておけば、その遺産を相続人が奪い合う事態を防げます。
相続トラブルが発生すると、家族関係が深刻に悪化してしまうおそれがあるほか、相続人には大きな負担がかかります。残される家族のことを考えれば、事前の相続対策によってトラブルのリスクをできる限り小さくしておくべきでしょう。 -
(3)相続税の負担を軽減し、納税資金を確保するため
遺産が多額に及ぶ場合は、相続税の申告・納付が必要になる可能性が高いです。
生前の相続対策の方法によっては、相続税の負担を軽減できることがあります。また、相続税の納税資金を確保できるように遺産の配分を決めておけば、相続人が不本意に遺産を売却しなければならない事態も防ぐことができます。 -
(4)相続手続きの段取りを整え、残される家族の負担の軽減するため
相続対策を行うと、遺産の分け方を決めることに加えて、相続手続きの段取りを整えることもできます。たとえば遺言書において遺言執行者を指定すれば、法的知識のある人(弁護士など)に相続手続きを一任することが可能です。
相続手続きは複雑でやることが多いため、トラブルの有無にかかわらず、相続人にとって大きな負担となります。生前の相続対策を適切に行い、残される家族の負担を軽減しましょう。
2、相続対策として事前にできることの具体例
相続対策の方法にはさまざまなパターンがありますが、その中でも代表的な方法を紹介します。
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(1)遺言書の作成
遺言書は、被相続人となる人が作成する、遺産の分け方などを記載した書面です。
遺言書によって遺産の分け方をあらかじめ指定すれば、自分の意思を相続へ反映させられるとともに、相続トラブルの予防を図ることができます。
また、弁護士などを遺言執行者に指定しておけば、自分が亡くなった後でスムーズに相続手続きを進めてもらえます。 -
(2)生前贈与
生前贈与とは、生前の段階で財産を他人に贈与することをいいます。
家族などに対して生前贈与を行えば、財産を早い段階から活用してもらえます。また、遺言書によって遺産の配分を指定する場合と同様に、相続トラブルを予防する効果も期待できます。 -
(3)家族信託
家族信託とは、信頼できる親族など(=受託者)に財産の管理を任せる仕組みです。受託者は、信託財産の形式上の所有者となって、受益者のために信託財産を管理します。
家族信託の活用範囲は幅広く、不動産の相続や認知症対策などにも活用できます。ただし、信託契約書の作成など複雑な対応が必要になるので、弁護士のサポートを受けましょう。 -
(4)法定後見制度の利用
被相続人となる人の判断能力が、認知症などによって低下している場合には、法定後見制度の利用を検討しましょう。
法定後見制度には、成年後見・保佐・補助の3種類があります。① 成年後見
成年後見人が本人のために、契約などの法律行為全般を代理人として行います。また成年後見人は、日常生活に関するものを除き、本人が自らした法律行為を取り消すことができます。
本人が判断能力を欠く状況にある場合に、成年後見が開始されます。
② 保佐
一定の重要な法律行為について、本人が法律行為をするために保佐人の同意が必要となります。
本人の判断能力が著しく不十分である場合に、保佐が開始されます。
③ 補助
一定の重要な法律行為のうち家庭裁判所が指定するものについて、本人が法律行為をするために補助人の同意が必要となります。
本人の判断能力が不十分である場合に、補助が開始されます。
法定後見は、家庭裁判所に対して申立てを行い、要件を満たしていることが確認された場合に開始されます。
後見人等は申立人が推薦できますが、実際に就任するのは家庭裁判所が選任した人です。推薦した人が必ず選任されるとは限りません。
法定後見制度を利用すると、本人が詐欺にだまされたり、浪費をしたりして財産が流出してしまう事態を防ぐことができます。
本人を守ることに加えて、相続財産を確保する観点からも、法定後見制度の利用は有益です。 -
(5)任意後見契約の締結
まだ本人の判断能力が十分であっても、将来の認知症などに備えるためには、任意後見契約を締結することが有力な対策となります。
任意後見契約とは、将来的に判断能力が不十分となった場合に、任意後見人が本人のために法律行為を代理することを定めた契約です。
法定後見と比べて、任意後見では代理権の範囲などを柔軟に定めることができます。また、任意後見人は本人自ら選ぶことが可能です。
すでに判断能力が低下している場合は法定後見の申立てを、将来的な判断能力の低下に備えたい場合は任意後見契約の締結を検討しましょう。 -
(6)相続税対策
不動産や生命保険を活用したり、遺産の配分を工夫したりすると、トータルの税負担(相続税・贈与税など)を軽減できることがあります。また、各相続人にバランスよく現金や預貯金を行き渡らせれば、相続税の納税資金を確保することもできます。
生前の相続税対策の適切な方法は家庭の状況によって異なるので、税理士などのアドバイスを受けましょう。
3、相続に向けた事前準備をする際の注意点
将来の相続に向けた事前準備を整えるに当たっては、特に以下の各点に注意しながら準備の進め方を検討しましょう。
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(1)認知機能が低下しないうちに相続対策を始める
認知症などによって判断能力が不十分になると、遺言書の作成や任意後見契約の締結ができなくなるなど、相続対策の幅が狭くなってしまいます。
相続対策は、十分な判断能力がある段階から行うことをおすすめします。 -
(2)公正証書遺言の作成を検討する
遺言書を作成するなら、公正証書遺言の方式を選択するのが安心です。公正証書遺言の作成は、弁護士に相談すればサポートしてもらえます。
遺言書は自書にて作成することもできますが(=自筆証書遺言)、形式の不備などによって無効になってしまうケースがよくあります。また、改ざんや紛失のリスクも懸念されます。
公正証書遺言は、法的知見を十分に有する公証人が作成するので、形式不備によって無効となるリスクがほぼありません。また、原本が公証役場で保管されるので、改ざんや紛失のリスクも防ぐことができます。 -
(3)相続人に対して情報を共有する
どのような財産を持っていて、その財産をどのように分けるかなどの情報は、生前の段階から相続人に対して共有しておきましょう。そうすれば、実際に相続が発生した際に、相続人が戸惑うことなく手続きを進められます。
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(4)遺留分侵害によるトラブルに注意する
偏った割合で遺産を配分すると、相続発生後に遺留分侵害によるトラブルが発生するおそれがあります。
遺留分とは、相続などによって取得できる財産の最低保障額です。兄弟姉妹以外の法定相続人と、その代襲相続人に遺留分が認められています。
遺留分が認められている相続人に対して、遺留分額を下回る財産しか与えないと、遺留分トラブルのリスクが生じます。遺言書や生前贈与などによって財産を配分する際には、遺留分を踏まえて配分割合を決めることが望ましいでしょう。
4、生前の相続対策や相続トラブルへの対応は弁護士に相談を
生前の相続対策を行う際には、弁護士にご相談ください。
弁護士は、家庭の状況やご本人の希望を十分に踏まえた上で、最適な相続対策をご提案いたします。税理士との連携により、相続税対策についてもサポートが可能です。
また、実際に相続が発生した際の手続きやトラブル対応についても、弁護士にお任せいただくのが安心です。遺産分割協議・遺留分トラブル・相続放棄など、幅広いお悩みの解決を全面的にサポートいたします。
5、まとめ
早い段階から相続対策を行えば、相続トラブルのリスクを最小限に抑えることができます。相続問題の実績がある弁護士のアドバイスを受けながら、家庭の状況に適した相続対策を速やかに行いましょう。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。遺言書の作成や生前贈与など、相続対策にご関心をお持ちの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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