自己破産が会社にバレたり、仕事に影響が出たりすることはある? 自己破産の影響を解説
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自己破産を検討されている方のなかには「会社にバレたり、仕事に影響が出たりするのが不安だ」と考えられている方もおられるでしょう。
自己破産の事実が会社に発覚することはほとんどありませんが、会社に借り入れがある場合などには発覚する可能性があるので注意が必要です。また、自己破産によって資格制限が生じる職種に就いている方は、異動や退職を強いられる可能性にも注意してください。
本コラムでは、自己破産によって仕事に生じる影響などについて、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説します。
1、自己破産をしたことは会社にバレるのか?
「もし自己破産をしたことが会社にバレてしまうと、気まずくて居づらくなりそうだ…」といった不安から、自己破産の申立てをためらっている方もおられるでしょう。
実際には、会社に自己破産の事実が発覚することはほとんどありません。
ただし、裁判所から会社に対する通知をきっかけに、自己破産の事実が会社に発覚してしまう例外的なケースもあるため、注意は必要になります。
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(1)自己破産の事実は官報公告される|ただし会社は普通チェックしない
自己破産を申し立てると、破産手続開始の決定や免責許可決定などについて、国の機関紙である官報に公告されます。
官報は誰でも閲覧・入手することができますが、官報を常時購読している人はまずいません。
官報から会社に自己破産が発覚する可能性は、現実的にはほぼないと言ってよいでしょう。 -
(2)自己破産の事実は会社に通知されない|ただし例外あり
自己破産をしても、原則としてその事実が会社に通知されることはありません。
ただし、以下のとおり、自己破産の事実が発覚してしまう可能性がある点に注意が必要になります。
2、自己破産が会社にバレる可能性があるケースの例
自己破産の事実が会社にバレてしまうのは、主に以下の2つのケースです。
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(1)会社に借り入れがある場合
自己破産を申し立てる従業員が、会社から金銭を借り入れている場合、会社は債権者の立場で破産手続きに参加する権利を有します。
この場合、裁判所は会社に対して破産手続開始通知書を発送するため、会社に自己破産の事実が発覚することになります。 -
(2)会社の給料が差し押さえられた場合
破産手続開始の決定の前に、一部の債権者によって会社に対する給料債権(退職金債権を含む)が差し押さえられている場合にも、自己破産の事実が会社に発覚してしまいます。
裁判所によって破産手続開始の決定がなされると、給料債権についての差押え(強制執行)は失効します(破産法第42条第2項)。
会社に対しては裁判所から破産手続開始の決定によって差押えが失効した旨の通知がなされるため、自己破産の事実が会社に伝わってしまうのです。
3、自己破産をした場合、資格制限が生じる職種がある
自己破産を申し立てる場合には、会社への発覚のみならず、一部の職業について発生する資格制限についても注意しなければなりません。
自己破産による資格制限が発生すると、免責許可が確定するまでの間、その職業の業務を行うことができなくなります。
この場合、配置転換や退職を迫られる可能性があるのでご注意ください。
具体的には、以下の職業などが資格制限の対象となります。
- 弁護士
- 弁理士
- 公認会計士
- 税理士
- 司法書士
- 行政書士
- 土地家屋調査士
- 社会保険労務士
- 通関士
- 宅地建物取引士・公的委員会の委員
- 金融機関(銀行など)の役員
- 警備員
4、自己破産手続きの流れ
以下では、自己破産の手続きの流れを紹介します。
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(1)弁護士への依頼・受任通知
自己破産を申し立てる場合、まずは弁護士に依頼するのが一般的です。
弁護士に依頼することでスムーズに申立ての準備を進められるほか、裁判所に納付する予納金を低額に抑えることもできます(少額管財の場合)。
弁護士と委任契約書を締結した後、弁護士から各債権者へ受任通知が発送されます。
受任通知の発送後は債権者向けの窓口が弁護士に一本化されるため、債務者自身が対応しなくてもよくなるのです。
なお、受任通知の到達をもって貸金業者からの取り立ては止まりますが、親族・知人など個人の債権者に対しては取り立てを停止する効果はない点に注意してください。 -
(2)破産手続開始の申立て
財産や債権者の調査、申立書類の準備などが完了した段階で、裁判所に破産手続開始の申立てを行うことになります。
裁判所に対して予納金は、申立てた段階で納付しなければなりません。
「同時廃止事件」の予納金は1万数千円程度、「管財事件」の予納金は20万円程度となります(弁護士が代理で申し立てる場合)。- 同時廃止事件:破産手続きの費用を支弁できないため、開始決定と同時に破産手続きが廃止される事件
- 管財事件:破産管財人が選任され、債務者財産の換価・処分や債権者への配当を行う事件
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(3)破産手続開始の決定・破産管財人の選任
裁判所は、「債務者が支払不能である」「予納金が完納されている」などの要件を満たしていることを確認した後に、破産手続開始の決定を行います(破産法第30条第1項)。その際には、破産管財人も併せて選任されます。
破産手続開始の決定以降、同決定時に破産者が有した財産(=破産財団)は、原則として破産管財人が一切の管理・処分を行います(破産法第34条第1項、第78条第1項)。 -
(4)破産財団の換価・処分
破産管財人は、破産財団に属する財産の換価・処分を行い、債権者への配当原資を確保します。
債務者が破産手続開始の決定時に有した財産は原則として破産財団に含まれ、破産管財人によって処分されてしまいます。
ただし、例外的に、99万円以下の現金・生活必需品・事業上不可欠な財産などは破産財団に含まれないため、債務者の元に残ります(破産法第34条第3項)。
また、裁判所の判断によって破産財団から除外された財産についても、債務者の元に残しておくことはできます。これを「自由財産の拡張」と言います(同条第4項)。 -
(5)債権者への配当
破産財団の換価・処分が終了した後、破産管財人は債権者に対する配当を行います。
なお、税金や使用人の3か月分の給料などの財団債権(破産法第148条、第149条)となる債権は、破産手続きによらずに破産財団から随時弁済を受けることができます。
配当の原資となるのは、破産財団の換価・処分によって得られた金銭です。以下の順位に従って配当が行われます。- (a)優先的破産債権(破産法第98条第1項)
- (b)一般の破産債権
- (c)劣後的破産債権(破産法第99条第1項)
- (d)約定劣後破産債権(破産法第99条第2項)
配当原資が債権全額の弁済に足りない場合は、同順位の債権者の間で按分して配当を行います。
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(6)免責審尋・免責許可決定
配当原資が尽きた段階で、残りの債務(債権)についての免責手続きへと移行します。
裁判所は、債務者に対して免責審尋を行い、免責不許可事由(破産法第253条第1項)の有無を確認します。
免責不許可事由がない場合には、残りの債務について免責が認められます。
免責不許可事由がある場合には、裁判所が裁量免責(破産法第252条第2項)の可否を判断します。
裁判所に裁量免責を認めてもらうには、自己破産を繰り返さないという反省や決意、および経済的な立ち直りに向けた具体的な計画などについて裁判所にアピールすることが重要になります。
免責許可決定が確定すれば、債務者は債務の負担から解放されます。
また、免責許可決定の確定をもって、一部の職業についての資格制限も解除されることになるのです。
5、債務整理を弁護士に依頼するメリット
債務整理を検討する際には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、債務者の状況に合わせて債務整理の方法をアドバイスいたします。
弁護士のアドバイスにしたがい、適切な方法によって債務整理を行うことで、より効果的に債務負担を軽減することができるでしょう。
また、実際の債務整理手続きの対応についても、弁護士に依頼することができます。
債権者との任意整理の交渉や、個人再生・自己破産など法的手続きの申立てに至るまで、弁護士が一貫して代行することが可能です。
借金の返済に苦しみ、債務整理を希望している方は、お早めに弁護士までご相談ください。
6、まとめ
自己破産を申し立てたとしても、その事実が会社に発覚することはほとんどありません。ただし、会社に借金がある場合や、会社の給料を差し押さえられている場合には、例外的に自己破産の事実が発覚してしまう可能性があるので注意が必要です。
また、自己破産の手続きが始まると、免責許可決定が確定するまでの間、一部の職業について資格制限が発生します。
該当する職業に就いている方は、配置転換や退職も覚悟する必要があります。
ベリーベスト法律事務所は、債務整理に関するご相談を随時受け付けております。
自己破産が仕事に与える影響などについても、ご状況に合わせて適切にアドバイスいたします。
借金の返済が苦しく、債務整理をご検討中の方は、ぜひベリーベスト法律事務所にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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