家族に内緒で自己破産することはできる? 家族に影響があるのかを解説

2025年04月07日
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家族に内緒で自己破産することはできる? 家族に影響があるのかを解説

自己破産を検討されている場合、「家族に内緒で自己破産をしたい」と希望される方もいるでしょう。

自己破産の手続きを進めていくにあたって家族の協力が必要になることもあるため、家族に内緒で自己破産を進めても途中でバレてしまう可能性は高いといえます。そのため、実際には、家族に内緒で自己破産をすることは困難なのです。

本コラムでは、家族に内緒で自己破産が難しい理由や自己破産が家族に与える影響などについて、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説します。

1、家族に内緒で自己破産をするのが難しい理由

まず。家族に内緒で自己破産をするのが難しい理由を解説します。

  1. (1)同居している家族に関する書類の提出が必要

    自己破産の手続きをする際には、同居する家族がいる場合、同居している家族の収入に関する資料(給与明細、源泉徴収票など)の提出が求められます
    家族に収入に関する資料を依頼する際には、相手から理由や使途を確認されるはずなので、隠し通すのは難しいでしょう。

    また、家計の収支状況を把握するための家計簿の提出も必要になります。
    自分で家計簿をつけている方であれば問題ありませんが、そうでない場合には、家族の協力がなければ正確な収支状況を報告することはできないでしょう。

  2. (2)家や車などの財産が処分される

    自己破産の手続きでは、一定の資産価値のある財産は、すべて手放さなければなりません

    家や車なども処分される可能性が高いので、それらの財産を持っている場合には、家族にバレずに自己破産を進めることは現実的に不可能だといえます。

  3. (3)家族からの借金も申告しなければいけない

    自己破産の手続きでは、債権者平等の原則により、すべての債権者を自己破産の対象に含める必要があります。
    家族から借金をしている場合には、身内であっても債権者のひとりとして扱われるので、裁判所への届け出が必要になります

    債権者には、裁判所から破産手続開始決定通知が送られますので、それにより自己破産のことが家族に発覚してしまう場合もあるのです。

  4. (4)保証人には債権者から一括請求がされる

    保証人がいる場合には、自己破産の手続きに着手すると、債権者から保証人に対して、一括請求がなされます。

    家族を保証人や連帯保証人にしている場合には、債権者から家族に連絡がいくことによって、自己破産をしたことが知られてしまうことになります

  5. (5)本人名義の家族カードが使えなくなる

    自己破産手続きに着手すると、弁護士から債権者に対して受任通知を送付します。
    債権者にクレジットカード会社が含まれる場合、受任通知の受領後は、クレジットカードの利用が停止されてしまいます。

    利用を停止されるカードには、本人名義のカードだけでなく本人名義の家族カードも含まれます。
    したがって、家族に家族カードを渡していると、クレジットカードの利用が停止することで、自己破産のことが発覚してしまう可能性があるのです。

2、生計をともにしていない家族であれば内緒にできる可能性が高い

家族に内緒で自己破産をすることが難しいのは、上述したような理由があるからです。
逆に言えば、上述したような理由があてはまらない事例であれば、家族に内緒で自己破産できる可能性があります。
具体的には、以下の条件をすべてを満たす場合には、家族に内緒で自己破産を進めることができる可能性もあります。

  • 家族と別居している
  • 自宅や車など処分される財産を持っていない
  • 家族からの借り入れはない
  • 家族が保証人になっていない


ただし、上記のようなケースであっても、絶対に家族に内緒で進められるというわけではありません。
なんらかのきっかけで家族に発覚してしまうリスクは常に存在するため、自己破産の手続きは注意深く進めていく必要があるのです

3、自己破産をしても、家族への影響は原則ない

自己破産をしても、原則として、家族に影響が生じることはありません。

  1. (1)家族名義の財産が処分されることはない

    自己破産では、一定の資産価値を有する財産については、すべて処分して債権者への配当を行わなければなりません。
    しかし、処分の対象となるのは、あくまでも破産者本人名義の財産に限られます。
    同居している家族であっても、家族名義の財産については基本的には処分されることはないのです。

    ただし、財産を処分されるのを回避するために、自己破産直前に自分の名義から家族名義に変更することは、絶対にやってはいけません
    このような行為をすると破産法上の「免責不許可事由」に該当して、裁判所から免責を受けられなくなってしまう可能性があるためです。

  2. (2)家族名義のクレジットカードの利用が制約されることはない

    自己破産をしたという情報は、信用情報機関に事故情報として登録されます。
    そして、信用情報機関に事故情報が登録されると、新規の借り入れやクレジットカードの申し込みなどができなくなってしまいます。

    しかし、事故情報として登録されるのは、あくまでも自己破産をした破産者本人の情報に限られます
    破産者本人の家族関係に関する情報が登録されることはありませんので、家族名義のクレジットカードであれば、引き続き利用することができます。
    また、家族名義であれば、金融機関や消費者金融で新規のローンの申し込みをすることも可能です。

  3. (3)子どもの就職や結婚にも影響は生じない

    「自己破産をすることで、子どもの就職や結婚に影響が生じないか…」という不安を抱く方もおられます。
    しかし、自己破産が子どもの就職や結婚に影響が生じることは基本的にはありません
    保険会社や金融機関といった一部の職種では、本人の自己破産歴が調べられることもありますが、親の自己破産歴が調べられることはないのです。

    また、自己破産をしたという情報が戸籍などに掲載されることもないため、あえて自分から申告しない限り、結婚相手の親に自己破産をしたという情報が知られることはないのです。

4、自己破産を家族に内緒にしたいのであれば早めに弁護士にご相談を

家族に内緒で自己破産をした場合には、早い段階から弁護士に相談しましょう。

  1. (1)家族に自己破産がバレてしまうリスクを説明してもらえる

    自己破産には、なんらかのきっかけで家族にバレてしまうリスクが常に存在しています。
    家族に内緒で自己破産をしたいという場合には、まずは、どのような場面で家族に自己破産が発覚してしまうのかを把握しておくことが大切です。

    専門家である弁護士なら、家族に内緒で自己破産ができるかどうかを判断することができます。
    家族に内緒で自己破産ができる可能性がある場合には、「どのような場面で自己破産がバレてしまうのか」について弁護士の説明を受けることで、発覚のリスクを最小限に抑えることができるでしょう。

  2. (2)弁護士が代理人になることで債権者からの連絡を回避できる

    借金の滞納を続けると、債権者から債務者の自宅宛てに督促の書面や内容証明郵便などが届くことになります。
    また、自己破産をする際にも、裁判所からの連絡が自宅宛てに届きます。
    家族がそれらの書面を目にすると、借金や自己破産の事実が発覚してしまうことになるでしょう。

    弁護士に債務整理を依頼すれば、弁護士が代理人となって債権者との対応することができます
    債権者からの連絡もすべて弁護士宛てにすることができ、裁判所からの連絡も弁護士が対応することができます。
    家族に内緒で自己破産を進めたいという場合には、借金の滞納が長期化する前に、早めに弁護士に相談しましょう。

  3. (3)自己破産以外の選択肢も提示してくれる

    借金問題を解決する方法には、自己破産以外にも任意整理個人再生などの手続きがあります。
    任意整理であれば、家族の収入に関する資料の提出は不要であるため、家族に内緒で手続きを進められる可能性は自己破産よりも高いといえます。
    また、個人再生の場合にも自宅や車などを処分する必要はありませんので、財産をお持ちの方であっても家族に内緒で債務整理を進められる可能性があるのです。

    債務整理にはさまざまな方法がありますので、ご自身の状況に応じた最適な手続きを選択することが大切です。
    弁護士であれば、家族に内緒にしたいという希望もふまえながら、最適な債務整理を提案することができます。

5、まとめ

自己破産は、家族の協力が必要になる手続きであるため、家族に内緒で自己破産をするのは現実的には難しいといえます。
自己破産をすることで家族に影響が及ぶことは基本的にはありませんので、まずは、そのことを家族に伝えて理解を得るように努めるのが最善でしょう。

「どうしても家族に内緒で自己破産をしたい」という場合には、早めに弁護士に相談してください。
ベリーベスト法律事務所では、借金や債務整理に関するご相談を、いつでも承っております。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています