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遺骨の引き取りをしても、相続放棄は可能?

2023年08月08日
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遺骨の引き取りをしても、相続放棄は可能?

裁判所が公表している司法統計によると、令和3年に大分家庭裁判所に申立てのあった相続放棄の申述件数は、2138件でした。

被相続人に多額の借金がある場合には、相続放棄を検討することになるでしょう。ただし、相続放棄をした場合には、借金のみならず遺産のすべてを相続することができなくなります。そのため、相続放棄を検討する際に、「遺骨の引き取りもできなくなってしまうのでは?」と心配する方もいると思われます。

本コラムでは、遺骨の引き取りをしても相続放棄が可能であるかについて、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説します。

1、遺骨の引き取りをしても相続放棄は可能

法律上、遺骨は「祭祀財産」に準ずるものと扱われます。
以下では、祭祀財産の概要と相続放棄の可否について説明します。

  1. (1)祭祀財産とは

    祭祀財産とは、先祖と祀るために必要な財産の総称であり、民法では以下の3つを規定しています。

    • 系譜(家系図など)
    • 祭具(位牌、仏像、仏壇、神棚など)
    • 墳墓(墓地、墓碑、墓石、埋棺など)


    遺骨は上記のいずれにも該当しませんが、祭祀財産として取り扱われることが相応しい性質の物であるため、祭祀財産に準じて扱われるのが一般的です

    祭祀財産は、一般的な相続財産とは区別されており、相続人による遺産分割ではなく、祭祀承継者が祭祀財産を承継することになります。
    祭祀承継者は被相続人からの指名や地域の慣習によって決められますが、指名がなく慣習も明らかでない場合には、家庭裁判所が判断することになります。

  2. (2)祭祀財産を承継しても相続放棄は可能

    相続が開始した場合には、相続人は、相続をするのかまたは相続を放棄するのかを自由に選択することができます。
    しかし、一定の事由に該当すると自動的に相続したものと扱われてしまい、相続放棄をすることができなくなってしまうのです
    このような事由を「法定単純承認事由」といい、民法921条では以下のものが規定されています。

    • 相続財産の処分
    • 熟慮期間内に相続放棄や限定承認をしないこと
    • 相続財産の隠匿、消費


    遺骨は、相続財産ではなく祭祀財産に準ずるものと考えられているため、遺骨を引き取ったとしても「相続財産の処分」には該当しません。
    したがって、遺骨を引き取った後にも相続放棄をすることは可能です。

    なお、被相続人の葬儀費用は祭祀財産には含まれません。
    被相続人の葬儀費用について誰が負担すべきかを定めた法律はありませんが、近年の裁判例では、被相続人があらかじめ自らの葬儀に関する契約を締結していない場合で、かつ相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合には、葬儀を主宰した喪主が負担すべきと判示した、と考えられるものがあります。
    上記の裁判例を前提とすると、葬儀費用は相続財産には含まれないこととなるため、相続放棄をしたとしても葬儀費用の支払い義務を免れることはできないと考えられます

2、相続放棄の流れ

以下では、相続放棄をする場合の手続きの流れを解説します。

  1. (1)相続財産の調査

    相続放棄は、一度受理されてしまうと撤回をすることはできないため、相続放棄をするかどうかは慎重に判断しなければなりません。

    相続放棄をするかどうかを正確に判断するためには、相続財産の調査は必要不可欠です
    相続財産を調査して、被相続人のプラスの財産だけでなくマイナスの財産についてもしっかりと調べたうえで、相続放棄の必要性を判断しましょう。

  2. (2)必要書類の収集

    相続放棄が必要だと判断した場合には、家庭裁判所への相続放棄の申述に向けて、必要書類の収取を行います。
    相続放棄の申述に必要になる書類としては、以下のようなものが挙げられます。

    • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
    • 相続放棄をする方の戸籍謄本
    • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本


    この他にも被相続人との関係によっては、被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本や被相続人の出生時から死亡時までの戸除籍謄本なども必要になる場合があります。

  3. (3)家庭裁判所に相続放棄の申述

    相続放棄の申述書を作成して、上記の必要書類と一緒に裁判所に提出して、相続放棄の申述を行います。
    提出先の家庭裁判所は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。

    なお、相続放棄の申述は、相続の開始を知ったときから3か月以内にする必要があります。熟慮期間の伸長を申し立てていない限りは、3か月という熟慮期間が経過した後は、相続放棄ができなくなる点に注意してください。

  4. (4)裁判所からの照会書への回答

    相続放棄の申立て後、しばらくすると裁判所から相続放棄照会書が届きます。
    同封の回答書を利用して照会内容に回答して、回答書を裁判所に提出しましょう。

    相続放棄は、一切の相続財産を相続することができなくなるという重大な効果が生じるため、本当に本人の意思で相続放棄が行われているのかを確認するために、このような照会が行われるのです

  5. (5)相続放棄の申述の受理

    裁判官は、相続放棄の申述書および照会書に基づき、相続放棄の申述を認めるかどうかを審理します。
    その結果、相続放棄の申述が認められた場合には、申述人に対して、相続放棄申述受理通知書が送られます。

    相続放棄の手続きは、基本的には、本人だけでも行うことができますが、限定承認をする場合には弁護士のサポートを受けることをおすすめします
    また、相続放棄をするか限定承認をするのかでお悩みの場合にも、まずは弁護士に相談してみましょう。

3、限定承認という方法もある

被相続人の借金の相続を回避する方法には、相続放棄以外にも、「限定承認」という方法があります。

  1. (1)限定承認とは

    限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲で、借金などのマイナスの財産を引き継ぐという手続きです。

    相続放棄は、遺産を相続する権利の一切を放棄するためプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことはありません。
    一方で、限定承認では、相続自体はするもののプラスの財産の限度でマイナスの財産を相続すれば済むという違いがあります
    そのため、プラスの財産とマイナスの財産がどのくらいあるのかわからない場合やどうしても手放したくない遺産があるという場合には、相続放棄ではなく限定承認を利用することができるのです。

  2. (2)限定承認のメリットとデメリット

    限定承認をする場合には、メリットとデメリットをふまえて、慎重に判断する必要があります。

    1. ① 限定承認のメリット
      限定承認の最大のメリットは、マイナスの財産があったとしてもプラスの財産の範囲内で相続すればよいという点です

      借金の金額が不明であったとしても、限定承認をしておけば、予想外の借金を背負わなくてもよくなります。
      また、相続財産のなかにどうしても手放したくない財産がある場合には、先買権という権利を行使することによって、必要な財産のみを取得することもできます。
      相続財産に自宅や自社株などが含まれる場合には、とくに有効な手段といえるでしょう。

    2. ② 限定承認のデメリット
      相続放棄であれば相続人が単独で行うことができますが、限定承認は相続人全員が一緒に手続きを行わなければなりません。
      したがって、ひとりでも反対している相続人がいる場合には、限定承認の手続きを行うことはできません

      また、限定承認は申立てをすればそれで終わりというわけではなく、清算手続きという非常に複雑な手続きが必要になります。
      そのため、専門家である弁護士のサポートがなければ難しい手続きだといえるでしょう。

4、相続に関するご相談は、弁護士へ

相続に関してお悩みの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)相続放棄・限定承認など必要な手続きをアドバイスしてもらえる

    相続が開始した後は、相続をするのか、相続放棄・限定承認をするのかを選択しなければなりません。
    相続の開始を知ったときから3か月を経過すると相続放棄や限定承認はできなくなるため、その間に手続きの選択をする必要があります。
    しかし、被相続人の死亡後は、葬儀や各種法要などで時間的にも精神的にも余裕がなく、相続放棄・限定承認の判断に必要な相続財産調査を行うことができないこともあります。

    弁護士であれば、迅速かつ正確な相続財産調査によって、熟慮期間内にプラスの財産とマイナスの財産を明らかにすることができます
    また、相続人の希望や相続財産の内容をふまえて、最適な相続方法をアドバイスすることもできるのです。

  2. (2)相続争いを解決してもらえる

    相続放棄ではなく遺産を相続することに決めた場合には、相続人による遺産分割協議をする必要があります。
    被相続人の遺産は、基本的には法定相続分に応じて分割をすることになりますが、特別受益や寄与分がある場合には具体的な相続分については修正する必要があります。
    また、遺産が現金や預貯金だけであれば分けるのも簡単ですが、不動産や有価証券などが含まれる場合には、どのように評価して、誰が相続するのかでトラブルになることもあるのです。

    このような相続トラブルを解決するためには、専門的知識と経験を備えた弁護士のサポートが不可欠です
    相続人同士でトラブルが生じる可能性がある場合には、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

5、まとめ

遺骨は、相続財産に含まれませんので、遺骨の引き取りをしたとしても相続放棄や限定承認をすることは可能です。

相続放棄や限定承認は、後から撤回することができないため、相続放棄や限定承認をするかどうかで迷っている方は、まずは弁護士に相談をすることをおすすめします。
相続全般に関するお悩みは、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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