満員電車で女子学生への痴漢容疑で逮捕された! 冤罪を防ぐために大切なこと
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満員電車は女性にとって「痴漢の被害に遭いやすい場所」であると同時に、男性にとっても「痴漢を疑われやすい場所」です。
JR大分駅には日豊本線・久大本線・豊肥本線の合計3路線が乗り入れています。通勤・帰宅のラッシュのピーク時には、痴漢に疑われないようにとくに気を付けている男性も多いでしょう。
痴漢のなかでもとくに悪質とされるのが「未成年者に対する痴漢」です。性的にも未成熟な未成年者が被害者となった場合、多大な精神的ショックを受けるため、加害者に対する処分は厳しくなります。
本コラムでは、未成年の女性に対する痴漢行為に関する法律や刑罰、痴漢で逮捕された場合の刑事手続きの流れ、無実の罪で疑いをかけられてしまった場合に取るべき対応について、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説いたします。
1、未成年に対する痴漢が多発する原因
「痴漢」の被害は若年層に集中しております
とくに未成年の女子中学生・女子高生は、痴漢のターゲットになりやすい傾向があるのです。
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(1)痴漢被害の状況
すべてのハラスメント問題解消に向けて取り組んでいる民間団体「#WeToo」が行ったアンケート調査「公共空間におけるハラスメント行為の実態調査」によると、電車内における痴漢被害を経験した女性の年齢層は下記の通りになっております。
- 10代:22.9%
- 20代:16.8%
- 30代:9.3%
- 40代:7.5%
さらに、中学生のころに身体を触られる痴漢被害を受けた経験者を対象に当時の服装を質問したところ、次の結果となったのです。
- 制服(ブレザー):48.7%
- 制服(セーラー):47.2%
- 制服(その他):50.3%
- 私服:28.9%
※複数回答あり
この調査結果からは、未成年のなかでも制服を着用している女子中学生や女子高生が痴漢被害のターゲットになりやすいという現状がうかがえます。
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(2)なぜ制服を着た学生に痴漢被害が多発するのか
制服を着た学生に痴漢被害が多発していると聞くと、「小児性愛などのように、性に対する意識がゆがんだ人物が加害者になっているのだろう」と考える方が多いかもしれません。
しかし、未成年に対する痴漢が多発する理由は、「制服を着た女子学生に性欲の高まりを感じる」という点だけに限られないようです。
多くの専門家は、女子学生に対する痴漢について、加害者には以下のような心理がはたらいている可能性を指摘しています。- 気が弱く、抵抗や反抗をしてこないためターゲットにしやすい
- 性交渉の経験が未熟な相手を征服したい
このような心理が背景にあるため、女子学生に対する痴漢を「マナー違反程度で、犯罪と呼ぶのは大げさだ」と勘違いしている加害者が多いという点も問題視されています。
2、女子中学生・女子高生への痴漢で問われる罪
電車内で女性中学生や女子高生に痴漢行為をはたらくと、都道府県が定める「迷惑防止条例」の違反か、刑法の「強制わいせつ罪」に問われる可能性があります。
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(1)迷惑防止条例違反
痴漢行為が軽度であれば、都道府県が定める「迷惑防止条例」の違反として処罰を受けます。
迷惑防止条例は、自治体によって若干の違いはあるものの、おおむね「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という正式名称で運用されている条例です。
迷惑防止条例は繁華街での客引き行為や盗撮行為などを規制するほか、痴漢行為も規制対象としています。
福岡県では「福岡県迷惑行為防止条例」が施行されており、第6条によって痴漢行為が規制されているのです。【福岡県迷惑行為防止条例】
第6条 何人も、公共の場所または公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
1 他人の身体に直接触れ、または衣服の上から触れること。
2 前号に掲げるもののほか、卑猥な言動をすること。
迷惑防止条例では、身体に触れる行為だけでなく、衣服の上から触れることや、卑猥な言動も規制対象とされています。
衣服の上から胸や尻を触る行為に加えて、股間を押し付ける、身体を密着させるなど、幅広い行為が「痴漢」とみなされて処罰の対象となるのです。
福岡県の迷惑防止条例における痴漢行為への罰則は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金となります。 -
(2)刑法の強制わいせつ罪
痴漢行為を罰するもうひとつの法律が、刑法第176条の「強制わいせつ罪」です。
強制わいせつ罪は、13歳以上の者に対して暴行・脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に成立します。
ここでいう「暴行・脅迫」は、殴る・蹴るといった具体的な暴力行為や「騒いだら殺す」といった脅迫的な文言に限定されません。
被害者の抵抗を抑圧する程度であれば足りるとされており、たとえば執拗なわいせつ行為によって被害者が抵抗できないほどの恐怖を感じていれば、暴行・脅迫があったものとみなされるのです。
「わいせつな行為」とは、被害者の性的自由や性的感情を害して、被害者に「恥ずかしい」と感じさせる行為をいいます。
迷惑防止条例違反との明確な区別はありませんが、次のような行為があれば、痴漢でも強制わいせつ罪が適用されるおそれがあるのです。- 衣服のなかに手を差し入れて胸や尻などを触る
- 直接・衣服の上からにかかわらず陰部に触れる
- 長時間にわたって執拗に痴漢行為を続ける
痴漢行為が強制わいせつ罪にあたる場合、6か月以上10年以下の懲役という重い刑罰が科される可能性があります。
また、強制わいせつ罪には罰金刑の規定がないため、有罪判決が下されると必ず懲役に処されてしまう重罪であるのです。
3、痴漢で逮捕された場合の刑事手続きの流れ
痴漢で逮捕された場合の刑事手続きの流れについて、解説いたします。
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(1)逮捕後は検察官に送致される
警察に逮捕されると、警察署の留置場に身柄を置かれて、取り調べを受けることになります。
逮捕から48時間以内に検察官へと送致されて、さらに検察官の取り調べを受けたうえで、送致から24時間以内に起訴・不起訴が決定するのです。 -
(2)必要に応じて勾留を受ける
送致を受けた検察官に用意されたタイムリミットは24時間です。
この24時間以内に、検察官は起訴・不起訴を決定しなくてはなりません。
しかし、逮捕から数十時間しか経過していない段階では取り調べが徹底されていないため、起訴や不起訴を決定するには証拠が不足してないことが大半です。
そこで、検察官は裁判所に対して「勾留」の許可を請求します。
裁判官が勾留の必要性を認めると、原則で10日間、延長を含めて最長20日間まで身柄拘束が延長されるのです。 -
(3)検察官が起訴・不起訴を判断する
検察官は、勾留が満期を迎える日までに起訴・不起訴を判断しなくてはなりません。
20日を超える勾留延長は認められないので、逮捕から数えて最長23日以内には、最終的な判断が下されることになります。
検察官が起訴した場合には刑事裁判が行われることになります。
一方で、不起訴処分とした場合には、釈放されることになるのです。 -
(4)刑事裁判を受ける
検察官に起訴されると、それまでは「被疑者」と呼ばれていた立場が「被告人」へと変わり、刑事裁判を受けるためにさらに勾留が続けられることになります。
ただし、この段階で保釈が認められれば、保釈金を納めることで一時的に身柄が解放されます。
刑事裁判は、起訴からおおむね1~2か月後に開始するのが一般的です。
最終期日となる結審の日には判決が下され、有罪か無罪かが決定します。
4、女子中学生・女子高生が被害者となる場合の示談のポイント
女子中学生・女子高生は「子ども」というほど未熟ではないにしろ、民法第5条の規定に従えば法律行為が認められない、「制限行為能力者」という立場の存在です。
被害届・告訴の取り下げや示談金の額といった交渉を自ら行うのは適切ではないため、示談交渉は代理人を通じてすすめることになります。
この場合、被害者の代理人は親などの保護者となることが一般的です。
ほとんどの場合、保護者は、わが子が痴漢の被害を受けたことに強い憤りを感じています。
示談交渉が難航することは必至であり、交渉のテーブルについてもらうことさえ容易ではありません。
示談交渉をスムーズにすすめるためには、加害者本人が被害者に対して交渉をもちかけるのではなく、弁護士に依頼することが重要になります。
5、痴漢の疑いを晴らすためには弁護士のサポートが必須
痴漢事件の容疑者として刑事手続きがすすんでしまうと、実際には無実であっても被害者の供述が信用されて、有罪となってしまうおそれがあります。
無実の罪で刑罰に処されてしまうことを「冤罪(えんざい)」といいます。
一般的に、痴漢事件はとくに冤罪が起きやすいと考えられています。
もし無実の罪で逮捕されてしまった場合、痴漢の疑いを晴らして冤罪を防ぐため、信頼できる弁護士に速やかに相談しましょう。
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(1)無実を証明するための証拠収集を依頼できる
弁護士に相談すれば、無実の疑いを晴らすための証拠を集めるサポートを受けることができます。
「容疑をかけられてしまった人が痴漢をはたらいた」という主張に対して合理的な疑いがある点を検察官・裁判官に示すことができれば、嫌疑不十分として、不起訴処分になったり無罪判決が下されたりする可能性を高めることができるのです。 -
(2)早期釈放が期待できる
たとえ疑いが晴れたとしても、逮捕されて最長23日間にもおよぶ長期の身柄拘束を受けてしまえば、会社を長期欠勤してしまうことになります。
弁護士に依頼すれば、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを主張して、早期釈放に向けたサポートが受けられます。
身柄拘束が長引くほど社会的な影響は大きくなるため、できるだけ早く弁護士に相談して、刑事弁護を依頼することが重要になるのです。
6、まとめ
痴漢事件では、容疑者として逮捕されてしまうと、被害者の供述だけが信用されて冤罪となってしまうおそれがあります。
女子中学生・女子高生に対する痴漢行為は大きな社会問題としてとらえられているため、とくに厳しい目を向けられて、重い処分が下されてしまう可能性も高いのです。
無実の罪で痴漢の疑いをかけられてしまいお困りであれば、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスにまでご相談ください。
早期釈放と冤罪の回避に向けて、弁護士が全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています