債務整理のやり方|3つの種類とそれぞれのメリット・デメリット
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裁判所が公表している司法統計によると、令和3年に大分地方裁判所に申立てのあった自己破産の件数は662件、小規模個人再生の件数は85件、給与所得者等再生の件数は11件でした。
債務整理には、主に、自己破産・個人再生・任意整理という3つの方法があります。いずれの方法でも借金の負担を軽減することができますが、それぞれの方法ごとに、異なる特徴やメリット・デメリットが存在します。借金問題を効果的に解決するためには、3つのなかから最適な方法を選択することが大切です。
本コラムでは、債務整理の3つの方法とそれぞれのメリット・デメリットについて、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説します。
1、債務整理の3つの方法
まず、債務整理の3つの方法を説明します。
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(1)自己破産
自己破産とは、裁判所から免責を認めてもらうことによって、すべての借金の返済義務を免除する方法です。
自己破産をすれば基本的にはすべての借金がゼロになりますので、多額の借金で生活が困難な状況にある方に適している方法といえます。 -
(2)個人再生
個人再生とは、裁判所から再生計画案の認可を受けることによって借金の総額を大幅に減額してもらい、それを3~5年の期間で分割払いしていくという方法です。
自己破産のように借金をすべてゼロにするまでの効果はありませんが、個人再生の場合は財産を処分する必要がないため、自宅など処分したくない財産を所有されている方に適した方法といえます。 -
(3)任意整理
任意整理とは、債権者と交渉をして和解することにより、将来利息のカットや遅延損害金の減免、支払い方法の変更などに応じてもらう、という方法です。
任意整理は自己破産や個人再生のように裁判所を利用する手続きではないため、一部の債権者を除外するなどの柔軟な対応が可能です。
そのため、保証人に迷惑をかけずに債務整理を行いたいという方に適した方法といえます。
2、債務整理の具体的なやり方
以下では、債務整理のそれぞれの方法について、手続きの具体的なやり方を解説します。
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(1)自己破産
自己破産には、同時廃止と管財事件という2つの手続きがあります。
どちらの手続きになるかによって具体的なやり方が異なってきますので、以下では、それぞれに分けて説明します。
① 管財事件
管財事件とは、裁判所によって破産管財人が選任され、破産管財人により財産の調査、換価、配当などが行われる手続きです。
管財事件になると、破産管財人による財産の調査や換価、配当などが行われるため、破産手続が終結するまでには3か月~6か月程度の期間がかかります。
また、申立人は、破産管財人の報酬として支払われる予納金を支払う必要があります。
② 同時廃止
同時廃止とは、破産手続開始決定と同時に破産手続が廃止する手続きです。
同時廃止では、破産管財人が選任されないため、財産の調査や換価、配当などが不要となり、短期間で手続きが終了します。
また、破産管財人への報酬の支払いも不要であるため、費用も低額に抑えることができるのです。
以下のような事情がある場合には、同時廃止になる可能性が高いです。
- 破産財団によって破産手続の費用を支出できない
- 免責不許可事由に該当する事情がない
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(2)個人再生
個人再生は、自己破産と同様に裁判所に申立てをして行う手続きです。
個人再生では、借金総額を大幅に減額することができますが、どの程度までの減額が可能であるかは、以下の3つの基準で判断されます。
- 最低弁済基準(借金額をベースとする基準)
- 清算価値補償基準(所有する財産の評価額をベースとする基準)
- 可処分所得基準(収入をベースとする基準)
小規模個人再生では、最低弁済基準と清算価値補償基準のうちいずれか多い方が適用されます。
また、給与所得者等再生では、3つの基準のうちいずれか多い方が適用されます。
なお、裁判所に申立て後には、以下のような流れで手続きが進んでいきます。
- ① 再生手続開始決定
- ② 債権届出、異議申述
- ③ 再生計画案の作成、提出
- ④ 書面付議決定
- ⑤ 再生計画案の認可決定
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(3)任意整理
任意整理をする際には、まずは債務者の正確な債権額を把握するために、債権者に対して取引履歴の開示を求めます。
開示後の取引履歴に基づきながら利息制限法による引き直し計算をすることによって、現在の正確な債権額を判明させることができます。
また、利息制限法による引き直し計算により、利息の払い過ぎが判明した場合には、債権者に対して過払い金返還請求をすることも可能です。
その後は、債務者の収支状況などをふまえながら和解案を作成して、各債権者と交渉を行うことになります。
債権者との間で和解が成立したら、合意書を作成し、和解内容に基づいた返済をスタートしましょう。
3、債務整理のメリット・デメリット
以下では、債務整理のメリットとデメリットについて解説します。
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(1)共通のメリット・デメリット
自己破産・個人再生・任意整理に共通するメリット・デメリットとしては、以下のようなものがあります。
① メリット- 借金返済の負担が軽減される 債務整理をすることによって、借金の返済負担が軽減されるというメリットがあります。
- 債権者からの督促や取り立てがストップする 弁護士に依頼をすると、弁護士から各債権者に受任通知を送付します。
どの程度軽減されるのかは選択する債務整理の方法によって異なりますが、基本的に、現在よりも状況が改善されることになるでしょう。
受任通知が各債権者に到達した後は債権者から債務者への直接の取り立てが禁止されるため、精神的にも余裕が生まれるでしょう。
債権者からの取り立てにより心身ともに疲弊した状態では、経済的再建に向けて取り組むことも困難になります。
そのため、早い段階から弁護士に相談することをおすすめします。
② デメリット
債務整理のデメリットとしては、どの方法を選択したとしても、信用情報機関に事故情報が登録されてしまう、という点があります。
事故情報が登録されるということは、いわゆる「ブラックリストに登録される」ということです。
具体的には、以下のようなデメリットが発生することになります。
- 新規のローンの申し込みができない
- クレジットカードの新規発行ができない
- 既存のクレジットカードの利用も停止される
- 奨学金の保証人になることができない
- 信販系の家賃保証会社を利用することができない
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(2)債務整理の方法ごとのメリット・デメリット
以下では、債務整理のそれぞれの方法ごとのメリットとデメリットについて解説します。
① 自己破産のメリット・デメリット
自己破産のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 税金などの非免責債権を除き、すべての借金をゼロにすることができる
- 預貯金や給料への差し押さえをストップできる
- 無職や生活保護受給者であっても手続きを利用できる
他方で、自己破産のデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 一定の資産価値を有する財産を手放さなければならない
- 保証人や連帯保証人に迷惑が生じる
- 一定の職業や資格による業務が制限される
- 免責不許可事由があると原則として免責を受けることができないト
② 個人再生のメリット・デメリット
個人再生のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 借金総額を大幅に減額できる
- 財産があってもそれを処分する必要がない
- 免責不許可事由があっても利用することができる
- 一定の職業や資格による業務の制限がない
- 住宅ローンがあっても自宅を手放す必要がない
他方で、個人再生のデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 安定した収入がなければ利用することができない
- 手続きの専門性が高く、時間と費用がかかる
- 保証人や連帯保証人に迷惑が生じる
③ 任意整理のメリット・デメリット
任意整理のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 月々の返済額を減らすことができる
- 将来利息のカットができる
- 遅延損害金の減額、免除を受けることができる
- 保証人や連帯保証人に迷惑がかからない
- 家族に内緒で手続きを進めることができる
他方で、任意整理のデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 借金の大幅な減額は難しい
- 債権者が応じてくれなければ和解が困難
4、弁護士に相談することで最適な債務整理を提案してもらえる
債務整理を検討されているなら、まずは弁護士に相談してください。
債務整理の3つの方法には、いずれも異なる特徴やメリット・デメリットが存在するため、どの方法を選択するかが重要になります。
どの方法が最適であるかは、債務者の収支状況や資産内容、債務総額や家族構成など、さまざまな要素をふまえながら判断する必要があります。
専門的な知識を持たない個人が判断することは難しいため、専門家である弁護士のアドバイスを受けることが必要になります。
「借金の返済で生活が苦しい…」と感じる方は、債務整理をするべきかどうか、する場合にはどの方法を選択するかを判断するために、弁護士に相談しましょう。
5、まとめ
債務整理には、自己破産、個人再生、任意整理という3つの方法があります。
3つの方法には、それぞれにメリットやデメリットが存在するため、ご自身の具体的な状況をふまえながら最適な方法を判断する必要があります。
最適な方法を選択するために、債務整理を検討されている方は、まずは弁護士に相談しましょう。
ベリーベスト法律事務所では、債務整理に関する相談をいつでも承っております。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています