離婚後の慰謝料請求は、証拠がなくてもできるのか?

2024年04月04日
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離婚後の慰謝料請求は、証拠がなくてもできるのか?

離婚の慰謝料は、離婚をする際に請求することが一般的です。しかし、離婚してから元配偶者の不倫が発覚したような場合には、離婚した時点では慰謝料を請求する原因を把握できていなかったために、離婚後に慰謝料請求を検討することになります。

離婚後であっても元配偶者に慰謝料請求することは可能ですが、離婚後の慰謝料請求にあたってはいくつか注意すべきポイントがあるため、それらをしっかり理解しておく必要があります。

本コラムでは、離婚後に慰謝料を請求する際のポイントや必要になる証拠などについて、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚後の慰謝料請求は可能?

まず、すでに離婚をしてしまった後に元配偶者に対して慰謝料を請求できるのかどうかや、請求する際の注意点について解説します。

  1. (1)離婚後でも慰謝料請求はできる

    慰謝料とは、精神的な苦痛に対して支払われる損害賠償金です。
    離婚に関する慰謝料の請求については、離婚する前に行わなければならないという決まりはありません。
    そのため、離婚をした後であっても、元配偶者に対して慰謝料請求をすることは可能です

    ただし、慰謝料を請求するためには、相手の故意または過失による不法行為によって精神的苦痛を被ったという事情が必要になります。

  2. (2)離婚後の慰謝料請求における注意点

    離婚後に慰謝料請求をする際には、以下のような点に注意が必要です。

    ① 元配偶者に有責性がある
    離婚による慰謝料請求をするためには、元配偶者に、以下のような有責性があることが必要になります

    • 不貞行為
    • DV、モラハラ
    • 悪意の遺棄


    たとえば、単なる性格の不一致による離婚の場合にはどちらか一方に明確な非があるわけではないため、原則として慰謝料を請求できません。

    ② 離婚時に清算条項の取り決めをしていない
    離婚時に離婚条件などの取り決めをした場合には、離婚協議書や公正証書の作成をすることが一般的です。
    そして、協議書や公正証書のなかで「清算条項」を定めていた場合には、離婚後に慰謝料請求をすることができなくなります。

    清算条項とは、紛争の蒸し返しを防止するために設けられる条項であり、離婚協議書などに記載されているもの以外の債権債務がないことを当事者間で確認する内容になります。
    離婚後に慰謝料を請求する可能性がある場合には、清算条項から慰謝料を除外するなどの対応をしておく必要があります

    ③ 時効が経過していない
    慰謝料請求には時効があり、時効期間が経過してしまうと、元配偶者に対して慰謝料請求をすることができなくなってしまいます
    離婚慰謝料の時効期間は離婚が成立した日から3年です。
    また、個別の不法行為(不貞行為、DV・モラハラなど)を理由に慰謝料請求をする場合には、損害および加害者を知った時点から3年又は不法行為の時点から20年が時効期間になります。

    たとえば、離婚後5年が経過した時点で元配偶者が婚姻中に不倫をしていたことを知った場合には、離婚慰謝料としての請求は時効になっていますが、個別の不法行為として請求するのであれば、不貞行為の時点から20年以上経過していない限り、時効期間が経過していないために慰謝料を請求することができます。

2、証拠がない場合は慰謝料請求できない? 証拠になり得るものとは

以下では、慰謝料を請求する際の証拠の必要性について解説します。

  1. (1)慰謝料請求には証拠が必要

    相手が不貞行為やDVなどの有責行為があったことを認めてくれるのであれば、証拠がなくても慰謝料を請求することができます。
    しかし、相手からすれば慰謝料を請求されると100万円から300万円程度の支払いを行うことになるため、証拠がないのに有責行為を素直に認めてくれる可能性は低いでしょう。
    そのため、相手が事実を否定した場合に備えて、相手の有責行為を立証できるだけの証拠を集める必要があります。

    また、話し合いで解決できない場合には、最終的に裁判により解決を図ることになりますが、裁判においては慰謝料を請求する側で相手の有責性を立証しなければなりません
    そのため、裁判をする際にも証拠は不可欠になります。

  2. (2)慰謝料請求の証拠になり得るもの

    慰謝料を請求する際に必要となる証拠は、どのような理由で慰謝料を請求するかによって変わってきます。
    以下では、慰謝料を請求する典型例である不貞行為やDVなどに関して必要になる証拠を紹介します。

    ① 不貞行為
    不貞行為とは「配偶者以外の異性との間で性的な関係を持つこと」であり、俗に「不倫」とも呼ばれる行為のことです。

    不貞行為を立証できる可能性のある証拠としては、以下のようなものが挙げられます。

    • 配偶者と不倫相手が性交渉を行う動画や写真
    • 裸で抱き合っている写真
    • ラブホテルに入っていくところを撮影した動画や写真
    • 肉体関係があったことをうかがわせる内容のLINEやメール
    • 探偵事務所の調査報告書


    ② DV・モラハラ
    配偶者からDVやモラハラを受けていた事実を証明することができる可能性がある証拠としては、以下のようなものがあります。

    • DVやモラハラを受けている状況を撮影した動画や録音データ
    • 暴行により怪我をした箇所を撮影した写真
    • 医師の診断書
    • 警察や公的機関への相談記録
    • DVやモラハラの状況を記載した日記やメモ


    ③ 悪意の遺棄
    「悪意の遺棄」とは、配偶者が正当な理由なく同居を拒否したり、扶助義務に応じなかったりすることをいいます。
    たとえば、お金に余裕があるにもかかわらず生活費を渡さなかったり、趣味やギャンブルに没頭して家庭を顧みなかったりしたなどの行為があった場合には、悪意の遺棄に該当する可能性があります。

    悪意の遺棄を立証できる可能性がある証拠としては、以下のようなものが挙げられます。

    • 住民票の写し、賃貸借契約書(別居の事実を証明する証拠)
    • 預貯金の入出金履歴、家計簿(生活費の支払いがないことの証拠)
    • 家事や育児に非協力的な内容のメッセージのやり取り


3、離婚後、元配偶者の不倫相手にも慰謝料請求できる?

以下では、離婚後に元配偶者が不倫していた相手に対しても慰謝料を請求できるかどうかや、請求する際の注意点を解説します。

  1. (1)離婚後でも元配偶者の不倫相手に慰謝料請求は可能

    元配偶者が不倫をしていた場合には、元配偶者だけでなく、元配偶者の不倫相手に対しても慰謝料を請求することができます。

    元配偶者に対する場合と同じく、不倫相手に慰謝料を請求することに関しても、離婚する前に行わなければならないという決まりはありません。
    そのため、離婚した後でも、不倫相手に対して慰謝料を請求することができます

  2. (2)元配偶者の不倫相手に慰謝料請求をする際の注意点

    離婚後に元配偶者の不倫相手に慰謝料を請求する際には、以下のような点に注意が必要です。

    1. ① 不倫相手に故意または過失が必要
      慰謝料を請求するためには、相手に故意または過失があったことが必要となります
      この場合の「故意」とは「交際相手が既婚者であることを知っていたこと」となります。
      また、「過失」は、「交際相手が既婚者であることを知らなかったものの、注意を払えば知ることができたこと」となります。

      不倫相手が元配偶者の職場関係者や友人などであった場合には、故意または過失が認められやすくなります。
      一方で、出会い系サイトやマッチングアプリなどで出会った人だった場合には、故意または過失が否定される可能性があることに注意してください。

    2. ② 元配偶者からすでに慰謝料をもらっている場合には請求できない
      不倫慰謝料の請求は、元配偶者だけでなく不倫相手に対しても行うことができます。

      しかし、不倫慰謝料の二重取りは認められていないため、すでに元配偶者から慰謝料をもらっている場合には、不倫相手に対して重ねて請求することはできません

    3. ③ 時効が経過していないか確認
      不倫相手に対する慰謝料請求をする場合には、不倫があったことおよび不倫相手を知った時点から3年以内に慰謝料請求を行わなければなりません。

      元配偶者に対する場合とは異なり、不倫相手に対する慰謝料請求については、離婚をした日から3年以内という定めはありません。
      そのため、婚姻中に不倫があることを知り、離婚後に請求しようと考えている場合には、時効期間に関してとくに注意が必要になります

    4. ④ 不倫相手への請求にあたっても証拠が必要
      元配偶者への慰謝料請求と同様に、不倫相手に対する慰謝料請求の際にも、不倫があったことを裏付ける証拠が必要になります。

      元配偶者と不倫相手とで口裏を合わせて不倫があったことを否定する場合あるため、十分な証拠を集めてから慰謝料を請求することが大切です

4、元配偶者への慰謝料請求を弁護士に相談するメリット

元配偶者への慰謝料請求をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)慰謝料請求に必要になる証拠をアドバイスしてもらえる

    離婚後に慰謝料請求をする場合、元配偶者とはすでに離婚して別々に暮らしているために、相手のスマートフォンの写真や動画、通信履歴などを確認することができません。
    そのため、離婚前の慰謝料請求に比べて証拠収集が困難になってしまいます。

    しかし、そのような状況であっても、適切な証拠を集めることで慰謝料を請求できる場合があります。
    相手の有責行為の種類によって必要な証拠は異なってくるため、まずは弁護士に相談して、どのような証拠が必要になるのか、どのように証拠を集めるべきかなどについてアドバイスを受けてください

  2. (2)慰謝料請求の交渉を任せることができる

    すでに離婚をした後では、元配偶者に連絡をとることが難しい場合もあります。
    また、連絡が取れたとしても、素直に慰謝料の支払いに応じてもらえないこともあるでしょう。

    このような状況でも、弁護士から連絡をすることで、本人同士の連絡では無視していた相手も話し合いに応じてくれる可能性があります
    また、話し合いに応じてくれない場合には、裁判などの法的手段により解決を図ることも検討できます。

5、まとめ

離婚後にも元配偶者に慰謝料を請求することはできますが、その際には証拠が重要になります。
証拠なしでは慰謝料の支払いに応じてもらうこともできないため、まずはしっかりと相手の有責性を裏付ける証拠を集めるようにしましょう。

離婚後に元配偶者の不貞行為が発覚したなどの事情により慰謝料を請求することを検討している方は、まずはベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています