残業が多い従業員に健康診断が必要な理由とは?
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企業には、労働安全衛生法に基づき、定期的に労働者の健康診断を実施する義務があります。通常の業務に従事する労働者に対しては、年1回の一般健康診断が必要になりますが、深夜業務に従事する労働者に対しては、6か月に1回の特定業務従事者健康診断が必要になります。
このような健康診断は、労働者の健康維持のために必要なものになりますので、会社から健康診断の要請があったときは、きちんと対応することが大切です。
今回は、残業が多い従業員に健康診断が必要な理由、健康診断受診時によくある疑問などについて、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説します。
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1、残業が多い従業員に健康診断が必要な理由とは?
残業が多い従業員に対しては、法律上健康診断が必要とされていますが、それにはどのような理由があるのでしょうか。
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(1)労働安全衛生法により健康診断の実施が義務付けられている
労働安全衛生法では、事業者は、労働者に対して、健康診断を実施しなければならないと規定し、健康診断の実施を義務付けています(労働安全衛生法66条1項)。
このような労働安全衛生法上の健康診断は、主に以下のような理由で実施が義務付けられています。- 脳、心臓疾患の発症の防止や生活習慣病などの増悪の防止を図るため
- 労働者の健康状態を把握して、労働時間の短縮や作業転換など適切な対応をするため
会社から健康診断の受診を求められた場合には、健康状態を確認するためにも、きちんと受診することが大切です。 -
(2)労働安全衛生法による健康診断の種類
労働安全衛生法により、事業者に対して義務付けられている健康診断には、以下のような種類があります。
① 雇い入れ時の健康診断
会社は、常時使用する労働者を雇い入れる際には、必ず健康診断を実施しなければなりません。
常時使用する労働者とは、以下の条件に該当する労働者のことをいいます。- 次のいずれかに該当すること
- 期間の定めのない労働契約
- 1年以上の期間を定めた労働契約
- すでに1年以上引き続き雇用された実績がある
- 1週間あたりの労働時間数が通常の労働者の4分の3以上であること
これらの条件を満たせば、正社員以外にもパートやアルバイトも対象となります。
② 定期健康診断
会社は、常時使用する労働者に対しては、1年以内ごとに1回の定期健康診断を実施しなければなりません。常時使用する労働者の条件は、上記と同様です。
③ 特定業務従事者の健康診断
会社は、特定業務に従事する労働者に対しては、6か月以内ごとに1回の健康診断を実施しなければなりません。
特定業務従事者とは、深夜業(午後10時から翌午前5時までの労働)や坑内労働など危険性の高い業務に従事する労働者のことをいいます。
深夜業に週1回以上または月4回以上従事する労働者は、特定業務従事者に該当しますので、上記の健康診断の実施が必要になります。
④ 海外派遣労働者の健康診断
会社は、労働者を6か月以上海外に派遣する場合には、健康診断を実施しなければなりません。この健康診断は、海外に派遣する前と帰国後業務に就く前の2回実施する必要があります。
2、残業が多い従業員に対しては医師の面接指導・臨時の健康診断が必要
残業が多い従業員に対しては、上記の定期的な健康診断の他にも、医師の面接指導が必要になります。
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(1)医師による面接指導制度とは
医師による面接指導制度とは、長時間労働により疲労が蓄積し、健康障害の発症リスクが高い労働者について、健康状態を把握し、適切な指導を行うための制度です。
医師による面接指導では、問診その他の方法で心身の状況を把握し、状態に応じて必要な指導が行われます。労働者は、医師から臨時の健康診断の実施を求められたときは、健康診断を受診しなければなりません。
また、事業者は、面接指導を実施した医師の意見を聞いた上で、労働者の健康を保持するために必要な措置を講じなければなりません。 -
(2)医師による面接指導制度の対象となる労働者
医師による面接指導制度の対象となる労働者は、以下のとおりです。
- 月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積があり、面接を申し出た労働者
- 月100時間超の時間外・休日労働を行った研究開発業務従事者
- 月80時間超の時間外・休日労働を行い、疲労の蓄積があり、面接を申し出た研究開発業務従事者
- 1週間あたりの健康管理時間が40時間を超えた場合において、その超えた時間が月100時間を超えた高度プロフェッショナル制度適用者
3、健康診断に関するよくある疑問
以下では、健康診断に関するよくある疑問とその回答を紹介します。
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(1)健康診断を受ける時間は残業になる?
健康診断を受ける時間が残業になるかどうかは、健康診断の種類によって異なります。
一般健康診断については、賃金の支払い義務はありませんので、健康診断を受診した時間に対して賃金は支払われません。
他方、特殊健康診断については、賃金の支払い義務がありますので健康診断を受診した時間に対して賃金が支払われます。就業時間外に健康診断を受診すると残業になりますので割増賃金を請求することができます。 -
(2)健康診断を拒否することはできる?
会社には労働者に対して、健康診断を受診させる義務がありますが、労働者にも健康診断を受診する義務があります(労働安全衛生法66条5項)。
労働者が健康診断の受診を拒否すると、懲戒処分の対象となりますので、特別な事情がない限りは、健康診断を受診した方がよいでしょう。
なお、会社が指定する医師に不満があるときは、労働者が自由に他の医師を選ぶことができます。 -
(3)健康診断の費用は誰が負担する?
年1回実際される定期健康診断は、労働安全衛生法上の義務ですので、基本的には会社が費用全額を負担しなければなりません。
ただし、オプション検査や人間ドックなど法律上実施が義務付けられていない項目については、労働者の自己負担になります。もっとも、会社によってはこのようなオプション検査についても費用補助の対象になっていることもありますので、会社に確認してみるとよいでしょう。
4、残業に関するトラブルは弁護士に相談を
残業に関するトラブルが生じたときは、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)残業代請求に必要な証拠収集をサポートしてもらえる
残業が多い会社で働いている場合、残業代が未払いになっている可能性があります。未払い残業代があるなら会社に対して請求することができますが、そのためには、まずは未払い残業代に関する証拠を集めなければなりません。
証拠がない状態で請求しても、裁判では負ける可能性が高いでしょう。そのため、残業代請求を成功させるには、十分な証拠を集めることが重要になります。
もっとも、どのような証拠が必要になるかは、具体的な事案によって異なりますので、弁護士に相談をして、状況に応じた適切な証拠とその収集方法についてアドバイスやサポートを得ることが大切です。 -
(2)未払い残業代の金額を正確に計算してもらえる
未払い残業代に関する証拠が集まったら、次は証拠に基づいて、未払い残業代の金額を計算する必要があります。しかし、残業代を正確に計算するには、法定労働時間や時間外労働の定義、割増賃金率の知識などが必要になります。
弁護士に依頼をすれば弁護士が代わりに残業代計算をすることができますので、正確な残業代の計算が可能です。 -
(3)会社との話し合いを任せられる
立場の弱い労働者が個人で残業代請求をしても、会社側は誠実に対応してくれないケースがあります。
このような場合には弁護士に会社との交渉を任せるとよいでしょう。弁護士が代理人として交渉すれば、交渉が進み残業代のトラブルが解決できる可能性が高くなります。早期解決を実現するためにも、弁護士への依頼がおすすめです。 -
(4)労働審判や訴訟にも対応してもらえる
会社との交渉が決裂したときは、労働審判の申立てや訴訟提起が必要になります。労働者個人では、このような法的手続きに対応するのは困難ですので、労働問題の実績がある弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士は、証拠に基づいて未払い残業代の存在や金額を主張立証します。判決確定後も任意に支払いに応じないときは、強制執行の手続きにより未払い残業代を回収することも可能です。労働者の権利を実現するためにも、弁護士へのまずは相談をご検討ください。
5、まとめ
労働安全衛生法では、年1回の定期健康診断の受診が義務付けられていますが、残業が多い従業員は臨時の健康診断を受けなければならないケースもあります。
未払い残業代がある場合や労働条件に疑問を感じている方は、弁護士に相談することで解決できる可能性があります。まずはベリーベスト法律事務所 大分オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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