寝たきりの旦那と離婚は可能? 離婚するための方法を解説
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大分市が公表している統計資料によると、令和3年の大分市内の離婚件数は797組であり、前年よりも73組減少しました。離婚率(人口千対)は1.68であり、こちらも前年の1.84を下回っています。
旦那(夫)が事故や病気によって寝たきりになってしまった女性のなかには、介護などのストレスから、離婚を考える方もおられるでしょう。夫に意識があれば話し合いによって離婚することもできますが、意思疎通を図ることができない場合には、裁判離婚という方法を検討する必要があります。
本コラムでは、寝たきりの夫と離婚する方法や離婚する際の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説します。
1、寝たきりになった夫と離婚することはできる?
まず、そもそも寝たきりになった旦那(夫)と離婚することが可能であるかどうか、という点から解説します。
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(1)寝たきりの夫と離婚することは可能
病気や事故などが原因で、夫が寝たきりになってしまうことがあります。
夫が寝たきりになると、主に妻が夫の介護を行うという家庭は多いでしょう。
さらに育児の途中であったり仕事をしていたりする場合には、妻は大変な毎日を過ごすことになります。
回復の見込みがあればよいですが、一生介護を続けなければならないとなると、将来に不安を感じて、離婚も検討されることもあるでしょう。
離婚の方法は、主に以下の三種類となります。- 協議離婚
- 調停離婚
- 裁判離婚
夫が寝たきりになったとしても、意思疎通が図れるのであれば、協議離婚が成立する可能性があります。
また、意思疎通が図れなかった場合にも、裁判離婚が認められる可能性があります。
つまり、配偶者が寝たきりになったからといって、離婚が禁止されることはないのです。 -
(2)介護が必要な状態だと簡単には離婚が認められないこともある
夫が寝たきりの場合、妻の介護がなければ生きていくことも難しいケースがあります。
裁判離婚をする際には、寝たきりの夫が離婚後に生きていけるかどうかも考慮して、離婚の可否が判断されることになります。
したがって、離婚後に寝たきりの夫が生活に困らないように、施設の手配や親族への引き継ぎなどをしっかりと行っていなければ、離婚を認めてもらうことが難しい場合もあるのです。
なお、離婚が認めたら、寝たきりの夫と妻との間には、法的には何の関係もない他人となります。
したがって、離婚が成立すれば、妻は夫の介護をする義務を負わなくなります。
2、寝たきりの夫と離婚する方法
寝たきりの夫と離婚する方法としては、以下のようなものがあります。
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(1)夫と意思疎通できるのであれば話し合いをする
腰のケガや頸椎(けいつい)の骨折などの身体的な障害によって夫が寝たきりになった場合には、夫の意識がはっきりしていれば、会話や意思疎通ができるでしょう。
このような場合には、通常の離婚と同様に夫との話し合いによって、離婚をするかどうか、離婚をする場合の条件などを決めることになります。
当事者同士の話し合いで離婚の合意が成立した場合には、離婚協議書を作成し、市区町村役場に離婚届を提出すれば離婚が成立します。
なお、養育費、財産分与などの取り決めをした場合には、お金の支払いをより確実なものにするために、離婚協議書を公正証書にしておきましょう。
公正証書にすることで、将来にお金の不払いがあった場合に、裁判をすることなく相手の財産を差し押さえることが可能になります。 -
(2)意思疎通が困難なら裁判をする
寝たきりの夫との意思疎通が困難な場合には、協議離婚や調停離婚で離婚をすることは困難であるため、裁判離婚による離婚成立を目指すことになります。
裁判離婚では、裁判官が離婚の可否を判断します。
その際に考慮されるのが「法定離婚事由」の有無です。
民法では、以下の五つの条件を法定離婚事由として定めています。
原則的に、いずれかに該当する事情がなければ、裁判での離婚は認められません。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
配偶者が寝たきりになって意思疎通ができない状態については、法定離婚事由である「強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」または「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性があります。
裁判の場で、診断書やカルテなどの証拠を用いながら上記の事情に該当することを主張・立証できれば、離婚が認められる可能性もあるでしょう。
なお、夫が寝たきりで意思疎通できない場合には、そのままでは裁判を行うことができないため、成年後見人を選任しなければなりません。
裁判においては、成年後見人が寝たきりの夫の代理人として手続きを進めていくことになります。
3、寝たきりの夫と離婚する際に知っておくべきこと
寝たきりの夫と離婚する際には、以下のような点に注意してください。
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(1)子どもは扶養義務を負う
離婚をすることによって、夫婦は他人同士になります。
元夫が寝たきりの状態であったとしても、元妻には、元夫の介護や援助をする義務はありません。
しかし、離婚をしたとしても、親子の縁は切れません。
そのため、子どもは引き続き親に対して扶養義務を負うことになります。
子どもが社会的にも経済的にも自立していない場合には具体的に介護などを要求されることはありませんが、社会人になって社会的にも経済的にも自立した場合には、子どもに一定の負担が生じることもあります。
ただし、通常、子どもの親に対する扶養義務は、配偶者同士が抱いている扶養義務に比べると軽いものとされています。 -
(2)保険金を受け取った場合には財産分与の対象になる
夫が病気や事故によって寝たきりになった場合には、夫が加入している保険会社から保険金が支払われることがあります。
婚姻中の給料などから保険料が支払われていた場合には、保険会社から支払われる保険金も夫婦の共有財産になるため、保険金も含めて財産分与を求めることができます。
裁判になった場合には、保険の内容、保険料の負担などについても具体的に主張しましょう。 -
(3)夫に収入があれば養育費を請求することも可能
子どもが未成年の場合、夫が寝たきりになってしまうと子どもの養育は困難になるため、基本的には、妻が子どもの親権を獲得することになります。
その際、夫が障害年金や不動産などによる収入を得ていれば、養育費を請求することができます。
寝たきりになった夫にも生活費や治療費が必要になるという理由で、養育費の請求をためらう方も多いでしょう。
しかし、養育費は、子どもの将来のために必要不可欠なお金です。
夫と子ども双方の事情についてしっかり考えたうえで、必要とあれば養育費の請求も検討してください。
4、離婚をする際には弁護士に相談
寝たきりになった夫との離婚を検討されている方は、弁護士に相談してください。
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(1)離婚の可否を判断してくれる
寝たきりの夫と離婚をする際には、夫が意思疎通できれば話し合いで離婚をすることができますが、意思疎通が困難な場合には裁判を起こさなければなりません。
しかし、裁判では、法定離婚事由がなければ離婚を認めてもらうことができません。
そのため、裁判の手続きを進めていく前に、まずは法定離婚事由の有無を判断する必要があります。
法定離婚事由の有無は、法律に関する専門的知識がなければ、正確に判断することはできません。
裁判手続きを開始する前に、まずは弁護士に相談しましょう。 -
(2)成年後見人の選任の手続きを任せることができる
意思疎通が困難な夫と離婚をするためには、成年後見人の選任が必要不可欠となります。
成年後見人の選任にあたっては、夫の収入、資産、生活状況などさまざまな資料をそろえて裁判所に提出しなければいけません。
一般の方にとっては煩雑な手続きとなり、多大な負担がかかってしまいます。
弁護士に依頼をすれば、裁判離婚の手続きと同時に、成年後見人の選任手続きも任せることができます。 -
(3)有利な条件で離婚できる可能性が高くなる
離婚する際には、親権、養育費、財産分与などさまざまな離婚条件を決める必要があります。相手が寝たきりであれば親権についても争いなく獲得できますが、その他の離婚条件については、夫の収入や資産状況によって、結果が大きく異なってくるでしょう。
また、相手が寝たきりである場合には、夫側から収入や資産状況の提出ができないこともあります。
そのような場合には、妻の側でそれらをしっかりと調査する必要が生じます。
弁護士に依頼すれば、夫の収入や資産状況の調査も任せられます。
財産の状況をしっかりと把握したうえで有利な条件で離婚するためにも、離婚を決意したら、できるだけ早く弁護士に連絡してください。
5、まとめ
病気や事故、認知症などによって夫が家で寝たきりになってしまうことがあります。
夫が寝たきりであったとしても、協議離婚や裁判離婚など適切な方法を選択することによって、離婚できる可能性もあります。
介護のストレスなどで将来が不安だという方は、離婚も選択肢のひとつとして検討してください。
ベリーベスト法律事務所では、離婚に関する相談をいつでも承ります。
寝たきりの夫との離婚を検討されている方も、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています