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有給休暇と残業時間の取り扱い|残業代の支払いはどうなる?

2023年09月21日
  • 労働問題
  • 有給
  • 残業
有給休暇と残業時間の取り扱い|残業代の支払いはどうなる?

2021年度に大分県内の労働基準監督署が監督指導を行った457事業場のうち、賃金不払い残業があったものは43事業場でした。

会社が適切に労務管理を行うためには、有給休暇と残業時間の取り扱いについて、労働基準法のルールを理解する必要があります。労務管理上の取り扱いに誤りがあると労働基準監督署による行政指導などの対象となるほか、労働者との間でトラブルに発展するおそれもあるので、くれぐれも注意しましょう。

本コラムでは、有給休暇と残業時間について、それぞれの基本ルールや関係性などをベリーベスト法律事務所 大分オフィスの弁護士が解説します。

1、有給休暇と残業時間の基本ルール

まずは、労働基準法における有給休暇と残業時間の基本的なルールについて解説します。

  1. (1)有給休暇に関する基本ルール

    「有給休暇」とは、労働者に付与される有給の休暇です。
    雇い入れの日から6か月間継続勤務して、かつ基準期間における全労働日の8割以上出勤した労働者には、使用者から年次有給休暇が付与されます。

    基準期間:雇い入れ後最初に付与される有給休暇については、雇い入れから6か月間。2回目以降に付与される有給休暇については、付与日直前の1年間。


    以下のいずれかに該当する正社員やフルタイム労働者については、付与される有給休暇の日数は下の表の通りになります(労働基準法第39条第1項、第2項)。

    • ① 1週間の所定労働日数が5日以上
    • ② 1年間の所定労働日数が217日以上
    • ③ 1週間の所定労働時間が30時間以上


    継続勤務期間 付与される有給休暇の日数
    6か月 10日
    1年6か月 11日
    2年6か月 12日
    3年6か月 14日
    4年6か月 16日
    5年6か月 18日
    6年6か月以上 20日

    また、上記枠内の①~③のいずれにも該当しないパートタイム労働者にも、継続勤務期間と所定労働日数に応じて有給休暇が付与されます(同条第3項)。

    原則として、使用者は労働者の請求する時季に有給休暇を与えなければなりません
    ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に有給休暇を与えることが可能です(=時季変更権。同条第5項)。

  2. (2)残業時間に関する基本ルール

    いわゆる「残業時間」は、「法定内残業」と「時間外労働」の二種類に分かれます。

    ① 法定内残業(法内残業)
    就業規則や労働契約で定められた労働時間(=所定労働時間)を超え、法定労働時間を超えない部分の労働時間。

    ② 時間外労働(法外残業、法定外残業)
    法定労働時間を超える部分の労働時間。

    ※法定労働時間:原則として1日当たり8時間、1週間当たり40時間(労働基準法第32条)


    法定内残業は、残業があり得る旨を就業規則や労働契約で定めておけば認められます。
    これに対して、時間外労働は「36協定」と呼ばれる労使協定を締結したうえで、36協定に定められたルールの範囲内でのみ命じることができます(同法第36条第1項)。

    残業代の金額は、法定内残業の場合は通常の賃金と同様ですが、時間外労働の場合は以下のような割増賃金となります(同法第37条第1項)。

    • 1か月当たり60時間以内の部分:通常の賃金に対して125%以上
    • 1か月当たり60時間を超える部分:通常の賃金に対して150%以上

    ※深夜労働(午後10時~午後5時)の場合は、通常の賃金に対して25%以上の深夜手当を加算

2、有給休暇と残業時間は相殺できる?

企業の経営者のなかには「残業した従業員に対して有給休暇を付与すれば、残業代を支払わなくてよい」と間違った理解をしている方もおられます。

有給休暇と残業時間を相殺することはできず、残業の対価として有給休暇を与えることも原則として認められません
このような取り扱いは労働基準法違反に当たる可能性があるため、不適切な労務管理をしている場合には早急に見直しましょう。

  1. (1)有給休暇と残業時間は相殺できない

    従業員による有給休暇の取得を認めたとしても、残業時間がなかったことになるわけではありません。

    <設例>
    • 6月1日:3時間の時間外労働(計11時間労働)
    • 6月2日:3時間の時間外労働(計11時間労働)
    • 6月3日:2時間の時間外労働(計10時間労働)
    • 6月4日:有給休暇を取得

    ※6月1日から4日はいずれも労働日とし、所定労働時間は1日当たり8時間とする。


    上記の設例では、6月1日から3日にかけて8時間の時間外労働をした従業員が、6月4日に有給休暇を取得しています。
    この場合、会社としては「8時間残業させた代わりに、1日の有給休暇取得を認めた」と考えているのかもしれません。
    しかし、労働基準法に従うと、6月1日から3日までに行われた8時間の時間外労働については、通常の賃金に対して125%以上の割増賃金を支払わなければいけません
    また、6月4日は有給休暇であるため、所定労働時間働いたものとみなして賃金を支払う必要があります(労働基準法第39条第9項)。
    したがって、6月1日から6月4日までの期間については、合計40時間分の労働について賃金を支払う必要があるのです(そのうち8時間分は時間外労働の割増賃金)。

    「有給休暇取得を認めたので残業はなかったことにする(≒有給休暇と残業時間を相殺する)」という誤った考え方をすると、6月1日から6月4日までの期間につき、合計32時間分の賃金しか支払わないことになります。
    この場合、8時間分の時間外労働の割増賃金が未払いとなり、従業員との間でトラブルに発展してしまうおそれがあります

  2. (2)残業の対価として有給休暇を与えることも原則不可

    労働基準法に基づく有給休暇とは別に、残業をした従業員に対して残業代の代わりに特別の有給休暇を付与することは、原則として認められません。
    特別の有給休暇を付与することは問題ありませんが、残業代については別途支払う必要があるのです。

    ただし、例外的に、代替休暇制度を導入した場合には残業代の一部に代えて有給休暇を付与することが認められます

    代替休暇制度の詳細については、以下の記事を参照ください。
    【企業向け】代替休暇制度とは? 導入に必要な手続きや注意点を解説(ベリーベスト法律事務所)

3、代休を与えれば、残業時間と相殺できるのか?

残業をした従業員に対して、残業時間に対応する無給の休暇(代休)を与える会社も存在します。

<設例>
  • 6月1日:3時間の時間外労働(計11時間労働)
  • 6月2日:3時間の時間外労働(計11時間労働)
  • 6月3日:2時間の時間外労働(計10時間労働)
  • 6月4日:無給の休暇(代休)を付与

※6月1日から4日はいずれも労働日とし、所定労働時間は1日当たり8時間とする。


上記の設例では、6月1日から3日にかけて8時間の時間外労働をした従業員が、6月4日に無給の休暇(代休)を取得しています。
この場合、6月1日から4日にかけての所定労働時間は32時間であるところ、実労働時間も32時間です。
そのため、「残業代は発生しない」と思われる方もいるでしょう。

しかし、6月1日から3日にかけてなされた8時間の時間外労働については、通常の賃金に対して125%以上の割増賃金が発生します。
所定労働時間と実労働時間が一致していても、割増分(通常の賃金に対して25%以上)に相当する残業代が発生するという点に注意してください。

4、人事・労務管理のお悩みは弁護士にご相談を

企業を経営されている方で、労働基準法に沿った人事・労務管理を徹底したい場合には、顧問弁護士への相談をおすすめします。

弁護士は、労働基準法その他法令の規制をふまえつつ、企業の実情に合わせた人事・労務管理の方法を提案することができます。
労働時間の管理方法や労働条件に関わる社内規定の整備などについても、具体的なアドバイスが可能です。

また、実際に従業員との間でトラブルが発生してしまった場合にも、顧問弁護士と契約していれば、すぐに相談することができます。
社内の実情をよく知っている顧問弁護士が対応することで、企業にとっても望ましい解決を得られる可能性を高められるでしょう。

その他の法律問題についても、顧問弁護士に相談することができます。
会社全体でコンプライアンスを強化し、トラブルのリスクを抑制するうえでも、顧問弁護士との契約が非常に有益なものとなるでしょう

5、まとめ

有給休暇と残業時間や残業代については、労働基準法において詳しくルールが定められています。
従業員を雇用する企業は、有給休暇や残業時間などに関する労働基準法のルールを正しく順守しなければいけません。

一部の企業では、有給休暇と残業時間を相殺するなど、誤った取り扱いがなされています。このような労務管理には従業員との間でトラブルに発展するリスクが存在するため、顧問弁護士と契約して見直しを図りましょう。

ベリーベスト法律事務所では、人事・労務管理に関するご相談を随時受け付けており、高い評価を受けている顧問弁護士サービスも提供いたしております。
企業を経営されており、有給休暇や残業時間などの労働基準法に基づくルールについて不安がある方やコンプライアンス強化を図りたい方は、まずはベリーベスト法律事務所にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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